飯豊連峰縦走の記録

悠峰山の会

会山行  YA.
【日時】2006年8月15日(火)~20日(日)
【メンバー】縦走:1
      支援:10人(車提供1人)
【天候】記事中
【山域】飯豊連峰
【コース】福島県川入から入山、小白布沢から三国岳へ登り飯豊連峰主脈を縦走、朳差岳
     から東俣コースを下山、大石ダムに到る。
【地形図 2.5万】略
【コースタイム】
/16 川入(村杉荘)5:35・車―小白布沢登山口5:50―横峰尾根7:55―峰秀水8:25―三国小屋9:48/11:45―種蒔山13:28―切合小屋14:30
/17 切会小屋5:00―草履塚5:40―姥地蔵6:10―御秘所6:16―御前坂6:43―本山小屋7:30/8:00―飯豊山8:25/9:10―御西小屋10:35/12:00―大日岳13:10/13:30―御西小屋14:35
/18 御西小屋7:25―天狗の庭8:16―御手洗の池9:10―烏帽子岳10:56―梅花皮岳11:30―梅花皮小屋12:00/13:00―北股岳13:35―門内岳15:00―門内小屋15:15
/19 門内小屋5:55―胎内山6:12―扇の地神6:20―地神山6:55―地神北峰7:23―頼母木山8:00―頼母木小屋8:20/9:33―大石山10:45―鉾立山11:38―朳差小屋12:30
 8
/20 朳差小屋5:30―朳差岳5:40―前朳差6:12―千本峰7:00―権内の峰7:31―カモス頭8:20/14:00―第二吊橋15:00―第一吊橋15:30車―大石ダム16:00―胎内パークホテル・温泉

●8月15日(火) 今日も朝からムシムシと暑い。いよいよ飯豊連峰の全山縦走へ出発の日だ。腰痛はなんとか大丈夫のようだが、数日前から痛み出した奥歯が心配だ。五泉駅9:49発の会津若松行きに乗り込む。車内は冷房が効いて快適だ。トンネルの多い線だがトンネルを抜けてもまるで緑のトンネルの中を行くようだ。2時間ほどで山都駅に着く。駅前から川入行きのバスは2時間も待ち合わせがあるので、少し離れた街の中心へブラブラと歩く。ジリジリと日が照り付け“もう参った!”という暑さだ。街の中心では通りを交通止めにして祭りの準備中だった。6000人の大民謡流しのポスターが貼ってある。スーパーで若干の食料を買い足して名物のソバを食べようと思ったが、明日からの縦走を考えると力の出る中華系が良いのではと思い直して駅前まで戻る。駅のすぐ前にラーメンの旗を立てた「じんべい食堂」があるのですばやくそこへ入った。とりあえず生ビールを頼んだ。店の中は祭りのせいなのか家族連れが多い。時間はタップリあるので生ビールのあとは地酒を頼む。なにか食べようとメニューを見るとサンマーメンとある。ラーメンにサンマが入っているのは怖いと思って聞いてみるとあんかけラーメンとのこと、さっそくそれを頼む。これがなかなか美味しい。酒をおかわりしてサンマーメンをツマミに時間まで飲む。イイ機嫌でバスに乗り込む。6人ほどの乗客だが途中何人かの乗り降りがあって50分程で川入に着いた。酒が効いて途中から寝てしまい終点で起こされた。

民宿は村杉荘、主人が御西小屋の管理人をしている家だ。一休みしてから集落の中を散歩したが驚いたことに飯豊鉱泉が廃業していた。建物は残っているが庇が雪で折れて哀れな姿だった。夕食に先代の御西小屋管理人のおじいさんと山の話しをしながら酒を飲んだ。

●8月16日(水) 5時起床、朝食・昼食をおにぎりにして5時35分民宿の奥さんのRV車で小白布沢の登山口まで送ってもらう。天気は良い。今日も暑くなりそうだ。6時少し前から登り始める。夏の飯豊はいつもそうだがまずアブの洗礼から始まった。少し油断すると大きな目白アブに刺されてしまう。歩き始めはなかなか調子が出ず腰にも違和感がある。途中の水場で休憩、宿のおにぎりを食べる。もうひと頑張りで横峰近くの稜線へ出た。

やっと急坂から解放されて峰秀水までなだらかな道を行く。この辺りで下山の数パーテイに会う。水を補給しさらに進んで地蔵からの道に合流する。剣が峰方面は上部がガスで隠れていて三国小屋は見えない。さあいよいよ難所の剣が峰の登りだ。以前はこうした岩っぽい登りは得意だったが最近年のせいかなぜか気持ちが萎えてくる。気を取り直して岩に取り付いた。途中次々に下山のパーテー、単独行が下りて来る。昨夜切会小屋に泊まったのが丁度今ごろ剣が峰を通過する時間なのかもしれない。どの一歩も大事な一歩と言い聞かせながら慎重に岩場を登る。一時間かけて剣が峰を通過、10時少し前に三国小屋に着いた。三国小屋は新築されていてトイレも小屋の中にある。元のトイレの場所は広場になっていてちょうどよい休み場になっている。ザックを枕に寝ていると疣岩山の道のほうから元気な声が聞こえてきた。D会のNさんだ。三国で10時の約束をしていたので時間どおりだ。それにしても今朝新潟を出て祓川から登り10時に三国に現われるとは、そのバイタリテ―に驚く。そのうえ冷えた缶ビールを持って来たとのこと。さっそく乾杯といきたい所だが切合方面から来る悠峰メンバー(2名)の到着を待つ。待つことしばらくで元気な声が聞こえてきた。感激の合流の後さっそく冷え冷えのビールで乾杯、美味い!。

 ここで2時間ほどラーメンや差し入れの果物を食べたりしてゆっくりとやすむ。楽しく嬉しい一時だった。このままズーと飲んでいたい気持ちだがそうもいかないので12時少し前にそれぞれの方角に別れた。悠峰パーテーは剣が峰を通って五段山方面へ下山、Nさんは疣岩山から鏡山を経て祓川へ下山、こちらは前途遼遠の縦走路へ踏み出した。

 天気は晴れだがガスが流れていて眺望はあまり良くない。鎖の岩場を過ぎたピークで休憩、その先の種蒔でもゆっくり休む。ビールが効いている。切合小屋に近づくとニッコウキスゲやマツムシソウが現われる。14時半切合小屋に着いた。食事つきの宿泊を申し込む。米三合持参で6200円、米無しはプラス1000円だ。心配していた腰が痛い。まだ先が長いのにこの先どうなるのかと心細くなる。着替えをしてひたすら横になって腰を休める。5時に差し入れのエビスビール(エビスビールだぞ!)と不味い小屋のカレーを食べて早々に寝た。泊り客は単独2、2人パーテイ2組、5人パーテイの11人だ。切合小屋には悠峰メンバーが酒、ビール、食料、つまみをデポしておいてくれた。感謝!

●8月17日(木) 4時起床、トイレに起きてみると濃い霧であたりは暗い。霧というか小さい雨というか衣類が濡れてくる。食欲も無いので朝食はいらないと言って雨具を着て5時に小屋を出発する。草履塚で休憩、前日の村杉荘のおにぎりを食べる。姥地蔵、御秘所を過ぎて御前坂、このあたりから空が明るくなってきて霧も乾いてきた。ただ風が非常に強い。本山への登りを緩登不休、ひたすら登る。心配していた腰の痛みは昨日ほどではない。7時半本山小屋へ着いた。気持ちのよさそうな新築小屋と別棟に立派なトイレがある。有料だがさっそく利用させてもらう。小屋の管理人と話しをしながら冷えたビールを飲む(800円)。神社を御参りして記念バッジを買う。本山は8時半、証拠写真を撮ってから風を避けて岩陰で朝食にする。インスタント味噌汁とおにぎりの残りでおじやを作る。本山からは強風とガスの中ゆっくりと御西小屋を目指す。途中から雨も降り始めた。駒形山、御西へ連なる稜線はお花畑の絨毯だ。今の時期は紫の花が主流だ。マツムシソウ、シャジン、トリカブト、その中にニッコウキスゲの黄色が鮮やかだ。雨の中10時半過ぎに御西小屋に着いた。この小屋も新築のきれいな小屋でトイレは小屋の中だ。今日の宿を申し込むと空いているので好きな所を使ってよいと言うので2階の一角を使って濡れ物を乾かし缶ビールを飲んで一休みした。12時依然として雨、風が強いが大日岳を目指して出発する。大日までの稜線も気持ちの良いなだらかな起伏でお花畑が見事だ。1時過ぎに強風の大日岳山頂に着いた。雨が止んで上空が明るくなってきたと見ていると、おういん尾根と思われる稜線がチラリと見えてまた霧の中へ隠れてしまった。しばらく待ったが霧が晴れないので小屋へ戻った。行きも帰りも同じくらいの時間がかかる。この小屋にも会メンバーのデポがある。なんと日本酒、エビスビール(3本)、ウナギの蒲焼(これは高い)、つまみなど感激の差し入れがあった。軽く夕食を食べてから管理人の小椋さんに酒があるので飲みませんかと声をかけた。今日は客が少なくて(私をいれて3人)このまま寝るのはさみしいと思っていたところだ、と大喜びされた。差し入れの酒・ビール・つまみも全部平らげ山の話しに盛り上って小屋の夜はふけていった。

●8月18日(金) 起きてみるとフラフラする。もちろん二日酔いだ。パンとコーヒーでかるく朝食を済ませ小椋さんに深く感謝して7時半に小屋を出る。昨夜一緒に飲んだ亀田のT氏は飲みすぎでまだ寝ていた。予定より1時間半も出発が遅れた。今日も朝から濃い霧と雨の中を歩き始めた。御西、梅花皮の間は二十数年前に一度歩いただけなので初めて歩くようで新鮮だった。天狗の庭、御手洗の池と進んでいくが昨日の飲みすぎがひびいてさっぱり行程がはかどらない。それでも周りのお花畑は見事だった。この辺りはチングルマやなんとかニンジンといった白い花も在ってそこに紫も混じり飯豊山中一番のお花畑と思う。烏帽子岳で11時になった。梅花皮岳をすぎ梅花皮小屋に着いたら12時だった。御西から4時間半もかかったことになる。小屋の前で休んでいるとガスが切れて日がさしてきた。北股岳が目前に聳え梶川尾根がなだらかに稜線を延ばしている。石転沢もその全貌が見渡せる。ここでお湯を沸かし差し入れのにゅう麺を食べる。疲れた胃にこれがまことに美味い。コーヒーを飲んで仕上げたが何か物足りない。管理人さんからビールを買う(800円)。ビールを飲みながらいろいろ話しをした。北股岳山頂で記念撮影、展望はまたまたガスが湧いてきて良くない。ギルダ原を越えて門内岳までゆるやかに高度を下げてゆく。道は穏やかで歩きやすいがまたまた腰が痛み出した。おまけに左膝外側が痛み出した。今日は頼母木小屋までの予定だがどうやら怪しくなってきた。門内岳に着いたら15時、小屋がすぐそこに見える。張り詰めていた気持ちがあっけ無く崩れて門内小屋に泊まることにする。私の意志は柔らかい。ビールを飲みながら管理人と話してみると、この小屋は黒川村(現胎内市)の管理だが新発田の下越山岳会がそれを引き受けているとのこと。小屋は元のままだがトイレはバイオの最新式に変わっていた。4時頃激しい雨が降った。その後は次第に晴れてきて新潟平野に夕日が落ちていくのを眺めながら家に携帯をかけた。小屋からはダメだが門内の山頂からは通じます。泊り客は初め4人しかいなかったが遅くなって7人の団体が来て11人だった。

●8月19日(土) 門内小屋を6時少し前に出る。天気は快晴。はるかに飯豊本山が山頂部に雲を纏って朝の日に煙っている。二王子岳が大きな山体をゆったりと横たえ、その手前に胎内尾根が二つ峰の特徴的なピークを持ち上げてしだいに胎内川の谷間に続いている。胎内山、扇の地神、地神山、と次第に標高を下げながらなだらかな草原状の気持ちの良い道を進む。7時半頃地神北峰着、ここは丸森尾根の分岐だ。頼母木山には8時に着いた。山頂には赤い帽子と前掛けを着けた石の地蔵さんが立っていた。なかなか美人の(?)地蔵さんで山をバックに写真を撮った。わずかで頼母木小屋、ここで大休止にする。小屋脇の炊事場にはホースで水が引いてある。どうだどうだとばかりに冷たい水がふんだんに流れている。さっそく冷たいビールを買う(700円)。プシュツ! ぐびぐびプハー!至福の一瞬である。つくづく幸せを感じてしまう(単純だなー)。ここで朝食にミニチキンラーメン、仕上げにコーヒーとゆっくりと休む。今日の泊まり用にさらにビールを買い込む。管理人さんの話しでは昨晩の客が大量にビールを飲んだので在庫が心細いとのこと。当方も朳差にはビールは無いのでどうしても確保しなければならない。おそるおそる3本たのむと、さしつかえない早い者勝ちだと気持ちよく分けてくれた。すまぬすまぬと感謝。頼母木小屋を歩き始めると足の松尾根を今朝登ってきたパーテーに何組も会った。みな胎内ヒュッテから同じバスで来たものらしい。しばらく進むと大石山方面からのなだらかな斜面を赤いシャツの単独行の女性が来る。近づいてビックリ、D会のYさんではないか!。私のために冷えたビールとつまみを持って登って来たとのこと。感謝、感激、雨、霰、もう何でもいいから降れ!。地獄に仏ではない地獄にYさんとやや混乱している。さっそく持参のビールで乾杯。おいしいおいしいと積もる話しも上の空で聞きながら飲む。Yさんは頼母木山まで登り日帰りする予定、健脚です。30分ほど歓談して心を残しながら別れた。Yさんには登りはじめて以来のゴミも持ってもらった。恐れ入ります。大石山には足の松尾根を登り切ったがくたびれはてて、“もうどうにでもして”と言う感じのパーテーが3組もいた。大石山から鉾立峰を見ながら一旦下る。最低鞍部から鉾立峰までジグザグの急登をひたすら登る。山頂に着いて一服。今日泊まる朳差小屋が見えている。小屋までの道は花を見たり玄さんの石碑を見たりしてゆっくりと歩き、12時半に小屋に着いた。元のカマボコ小屋のコンクリート土台跡がちょうど良い休み場になっている。昨日今日と途中で話しをした新発田の方がもう小屋に着いて昼飯を食べている。今朝梅花皮小屋から来たというからこの方も相当の健脚だ。水場は小屋の裏から10分ほど下った所にある。枯れた沢をかなり下った小さな水溜りがそこだ。短いホースが置いてあり口で水を吸い込んで汲むのだ。ちょっとさみしい。時間はタップリあるので水を汲んだり山頂へ登って写真を撮ったりした。小屋脇のコンクリートの休み場でビールを飲んでから昼寝をする。今日の小屋の泊まりは単独2人と2人パーテー、3人パーテイの7人だった。夜8時頃会メンバーとNさんに携帯で朳差小屋に着いた旨連絡する。驚いたことにNさんは明日足の松尾根を登ってくるとのこと。恐れ入りました。

●8月20日(日) 縦走もいよいよ今日が最後だ。コーヒーを飲んでから5時半に小屋を後にする。朳差岳の山頂から今まで歩き通した飯豊の山並みを振りかえった。さすがに感慨深いものがある。前朳差岳が6時過ぎ、千本峰はどことわからないうちに通過、権内の峰には7時半に着いた。ここでゆっくりと一服。下るにつれてブナの気持ちよい林の中を行く。8時半にはカモスの頭に着いてしまった。ここが出迎え組との待ち合わせ場所だ。皆が来るのは10時半から11時になるだろう。銀マットをしいてゆっくりと休む。最後のビールを飲むと眠くなってきた。すこしうとうとしていると10時を過ぎていた。10時半になってもうそろそろ来る頃だと出迎えに下り始めた。歩き始めるとすぐにAさんが登ってきた。4日ぶりの再会だ。皆は少し遅れているというのでもう少し下る。炎天下の急登を汗みどろになって会メンバーの4人が登ってくるのが見える。嬉しかった。感激の再会もそこそこにしてカモスの頭へ戻る。宴会場を作るのももどかしく生ビールで乾杯。差し入れのご馳走は豪華絢爛、素晴らしいの一言。えだまめ・ステーキ・カルビ・ソーメン・モッコリタマゴなどなど・・・。縦走中の貧しい食事に比べたらこの豪華なご馳走はどうだ!。参りました!。尽きぬ話しに盛り上っていると上のほうから声がする。ななんと、D会のNさんではないか。昨夜携帯で連絡してあるので来るのはわかっていたがこんなに早く来るとは。あなたは天狗か!。三国岳の差し入れといいこの度とNさんには脱帽!。Nさんを加えブナ林の中の宴はいよいよ盛り上った。しかしこのままここで泊まるわけにもいかず2時頃下山を始める。下山中はビール、酒が効いていてほとんど記憶も無いまま第二吊橋を渡る。月夜平の気持ちのよいブナの林を過ぎてついに迎えの車についた。もう歩かなくても良いのだ。おもえば川入りの小白布沢を歩き始めて5日間、よく歩いたものだ。それも皆さんの支援が無ければ到底歩き通すことは出来なかったろう。ただただ感謝!。

林道を大石ダムまで出るとそこにはD会のT夫妻が待っていた。T夫人Yさんは昨日大石山までビールを差し入れゴミまで持って下りて貰った。感謝の言葉をいくら言っても足りない。T夫妻、Nさんとはここで別れ、われわれは最後の仕上げに胎内パーク温泉に向かった。

                                   終り。