丹後山〜下津川山〜ネコブ山

会山行ku-ninn49
【日時】2008546日(連休)
【メンバー】2人(2=5/4-5丹後山〜本谷山)
【天候】<5/4>晴れ<5/5>曇りのち雨<5/6>晴れ
【山域】奥利根山塊
【地形図】奥利根湖・兎岳
【時間記録】
<5/4>十字峡8:27 − 登山口9:239:34 − 小休止10:2810:42 − 小休止11:3311:54 − 小休止12:3411:58 − 小休止13:5714:20 − 丹後小屋14:40
<5/5>丹後小屋6:50 − 越後沢山8:358:48 − 本谷山9:4310:07 − 中尾ツルネ分岐10:25 − 小休止10:5711:10 − 小休止12:2412:37 − 下津川山13:4914:02 − 小休止15:2115:32 − ネコブ山16:15 − テン場16:26
<5/6>テン場10:10 − 桑ノ木山11:2111:37 − 十字峡13:58


 ここ数年、5月の連休で奥利根源流の山々を歩いてきた(平成17年・白毛門〜巻機山、18年・巻機山〜下津川山、19年・尾瀬〜本谷山)。一昨年に丹後山まで歩きたかったのだが、下津川山からネコブ山経由で十字峡に下山した。昨年、尾瀬から丹後山に抜け、そのまま下津川山に行きネコブ山からまた下山しようとしたが、下津川山へのヤブがミックスされた急峻げ?!な尾根を見て退き、中尾ツルネを下りてしまった。今春どうしても本谷山から下津川山のルートを繋げないと心残りになるだろうと再度計画をした。1泊で入るメンバー2人と一緒の計4人での入山となった。

 初日は晴れ。麓は雪消えが遅いらしく、ダム湖の車道や丹後山に向かう林道に昨年には無かった残雪が塊となってあった。丹後山の登山道は最初から急登が続く。でもこの季節、新緑やタムシバなど早春の花々が目を楽しませてくれるのがうれしい。標高1100mくらいからは雪の上を歩くようになり、中ノ岳、ネコブ山や桑ノ木山など展望も開けてきた。

 主稜線に上がり、笹原の中の登山道を少し行くと丹後小屋に着く。昨年歩いた尾根、平ケ岳から奥利根源流の山々が一望できた。麓は残雪が多いいが、稜線は雪解けが早いように見える。昨年は真っ白だった尾根も黒々としている。雪の降る時季や量、降り方によるのだろうか。自然の摂理はわからない。

 夜から天気は下り坂になり、翌朝は深いガスが立ち込めていた。早出をする1泊組を見送る。できれば下津川山を越えて、ネコブ山経由で十字峡に下りたいと言っていた。

私たちもガスの中、丹後小屋を後にする。越後沢山までは尾根が広いので、雪面の先行者の足跡を追いかけながら歩く。一箇所深いヤブがあり、そこで雨具を着る。標高差150mほどの雪の急斜面を登りきると、越後沢山の三角点に飛び出た。

 ここから本谷山までは尾根も細くなり、ヤブっぽい尾根上を歩くことになる。本谷山に近づくにつれて、2人パーティーらしい人形を見つける。もしかしたら、先行パーティーかしら?また会えるわ!でも、まだこんなところにいるの?などと思いながら本谷山にと足を進めた。

 本谷山で合流すると、やはり私たちのメンバーだった。途中で道を外してしまい、時間をロスしてしまった、と言っていた。ここでガスが晴れ、視界が利き、すべてを見渡せられた。下津川山への尾根は、まっ黒黒黒で、昨年よりもより険しく見えた。ここまでに何人かにすれ違ったが、すべての人がヤブが深かった!!と言っていたものな……。1泊パーティーもこの尾根を見て、中尾ツルネを下山することにしたらしい。ちょうど薄日も差し始めてきたので、ゆっくりと下山すると荷物を広げていた。

 私たちは、意を決して(あきらめて?)下津川山に向かうことにする。中尾ツルネの分岐を過ぎヤブの尾根を行く。一時は晴れたが、また深いガスに囲まれてしまう。1712mピークの広い笹原で方向を見失ってしまい、地図とコンパスで道?!を探したが、後は尾根上を外れることなく下津川山へ向かうことができた。

 深いガスは山頂に近づくにつれて雨になった。山頂直下の急坂を登り終えると、見覚えある山頂に着いた。ガスと雨で視界はまったく利かない。道標だけが山頂だと誇示していた。本谷山を出てから4時間近くもかかっていた。ほとんどがヤブの中での奮闘、大変だった…この一言に尽きた。

 ネコブ山へは歩いたことがあるので安心、というわけではなかった。一昨年は晴天で時間に余裕があった…こういう時の記憶というものはまったく残っていなかっただけだった。割れている雪の斜面を選びながら下る。緩いアップダウンを繰り返しながら行くのだが、尾根が細くなり険しくなっていく。

 ガスが晴れ視界が利くと、目の前に佐渡の二ツ亀みたいな小さな突起が連なっていた。「ひょえぇぇ〜〜っ」これを一つ一つ越えていかなければならなかった。「こんなに険しい尾根だったのね」、私は呆然として立ちすくんでしまった。ヤブは登りだけではなく、下りも大変だと思い知らされる。雨に濡れてヤブはより滑りやすくなっているし、ヤブを握る手も疲れてしまっていた。

 テン場には到底適さないので、ネコブ山まで行くことになる。ガスは晴れたが、風が強い。ネコブの耳?を越えた雪渓でテントを張ることにする。桑ノ木山への急斜面はまたもや深いヤブを通過しなければならないようだった。夜からは風雨が強まりさらに荒天の天気となった。

 翌朝は快晴。冷え込みが厳しかったらしく、雪はカチコチにクラストしている。今日は十字峡まで下るだけなので、ゆっくりとした朝を過ごした…今回はアイゼンを持参してこなかったので、とても出発できる状態でもなかった。陽が高くなるにつれ、テントの中は温室状態。最高のひと時だった。

 ヘリが旋回しているらしく、音が続いている。稜線まで上がるわけでもなく、どうも沢筋沿いに動いているらしい…翌日気になったので新聞を注意していたら、山菜採りの人の遭難事故があったということが記されていた。

青空の下、自分たちが歩いたすべてのルートを一望できた。丹後山から越後沢山はまだ白く見えるが、本谷山から下津川岳の稜線はやはり黒々と見える。下津川岳からネコブ山も上部は雪が付いているが、下りてくるにつれ険しくなっている。昨日歩いたルートの九割方はヤブだったような気がする。いや、気のせいではない、確かにほとんどがヤブだった。桑ノ木山への下りでもすぐにヤブに突入した。それも背丈より高いジンダケのヤブだった。

桑ノ木山は広い雪原。中ノ岳と八海山に向かって歩く。1196mピークあたりから尾根が細くなり、夏道をなる。この尾根、夏道は付いていないのだが、残雪期によく使われるようで、踏み跡がしっかりと付いている。ブナの萌黄色の新緑の中に入ると、タムシバやシャクナゲなどの花にも囲まれる。

ガサガサ、ドスン!という音に目を凝らすと、小さな生き物がこちらを見ていた。小熊だった。「かわいい」などと悠長なことは言っていられず、親熊の警鐘へと大声や笛を吹いたりしながら通過する。最後に揚水ダム?の長く急な階段を下り終わり、車へと戻った。

なんとか繋げた奥利根源流の山々の線。残雪の付き方なのだろう、今回が一番難儀した。でも、苦労したことは絶対に忘れない。何も見えなかった下津川山の山頂も忘れないだろう。体力や気力が落ちていくだろうなか、もう山頂は踏めないだろう。でも、周りのどこかの山から見えたときは、懐かしさと親近感でいっぱいになるに違いなかった。

今回、最終的には丹後山からの入山となったが、最後まで回り方を悩んだ。1泊メンバーは下津川山に登りたがっていた、だが、夏道ルートを登り小屋で1泊を選んでしまった。最終日までそれが良かったか答えは出なかった。ネコブ山から桑ノ木山までの深いジンダケのヤブこぎで、こちらを登りに使わなくて良かったとはっきりと思った。初日からヤブに悩まされ、雪上での狭いテント泊だったら、体力がもっと続かなかっただろうから。

<丹後小屋>




 <丹後小屋からの越後沢山と本谷山>



<本谷山山頂と越後三山方面>



<本谷山山頂からの下津川山と小沢岳>



 <下津川山山頂の道標> 




 <ネコブ山山頂>





<2泊目のテン場>



<下津川山と小沢岳>



 <桑ノ木山山頂と中ノ岳>