浅草岳(入叶津から)
個人山行(なんちゃってテレマーク)
【日時】2010年3月20日(土)
【メンバー】M(悠峰山の会山スキー部隊)
【天候】 晴れ
【山域】 会津
【地形図】 守門岳・只見
【時間記録】 入叶津07:30 − 平石山スノーシェッド7:48〜8:03 − 山ノ神杉08:48〜09:03 − 小三本沢09:05 − 安沢950m 10:01 − 1160m10:25〜10:45 − 山頂12:00〜12:13 − 1315m<昼の憩い> 12:25〜13:36 − 小三本沢 14:23 − 山ノ神杉 14:32〜14:47 − 入叶津 15:18
3月の連休の初日,天候が崩れる前に浅草岳に向かう.久しぶりに入叶津から沼の平経由で山頂を目指す.
山スキーを始めたころは,ムジナ沢経由で浅草岳に登っていたが,どうもムジナ沢のトラバースがいまいちで,最近は足が遠のき,もっぱら向かいの守門黒姫方面に行っている.
しかしながら,この沼の平経由で登る浅草岳は別格だ.平石山下の山ノ神杉付近から山頂近くまでずっと素晴らしいブナの林が続く.しかも,沢を詰めたり,広い雪原を歩いたり,変化に富んでいる.ただし,結構な登り返しがあり,距離もそれなりにあるが,ステップカット付きのテレマークスキーが,その辺を解決してくれるだろう.
ということで,早朝5時過ぎに出発する.天気予報では,午後から風が強くなるらしいが,空を見ると,上空の寒気と風の強さをうかがわせる高積雲(いわし雲)がすでに広がっている.
それでも,7時過ぎに入叶津に到着する頃には,すっかり青空が広がっている.支度をして国道289号線を歩き始めると雪がしっかり凍っていて,ステップカットの効きが良くないが,この程度の傾斜であれば,シールよりも抵抗が少なく,楽に滑り歩ける.
20分も歩くと,平石山スノーシェッドだ.スノーシェッドの手前には立派な温度表示盤があり,なんと作動している.どうやら年中無休のようだ.熊も冬眠時期決定に大助かりだろう.
ここでスキーにシールを貼り,再度支度を整えると,いよいよ本格的な登りだ.
その温度表示盤の表示は,着いた時には0度だったが,支度が終わるころには,もう1度になっている.
【取り付きのスノーシェッド】
まずは,スノーシェッドの手前に取り付き,2番目の砂防ダムの下流側を横断し,あとはおおむね夏道どおりに登っていく.雪は締まって,シールが良く効く.途中平石山からの雪崩の走路となるところがあり,雪の状態によっては十分注意が必要だ.今日もデブリが氷河のモレーンのようになっている.
【平石山からのデブリ】
登るうちに南向きの斜面のため日があたってどんどん気温が上がり,締まった雪もいつのまにか緩んでくる.立ち止まると,シールに雪が付いて体力を消耗する.
【遠方尾根の鞍部に山の神杉が見えている.】
いつものように山ノ神杉のところは一部雪が切れて,祠が出ている.ここで小休止して,汗を拭く.
この先は小三本沢の渡渉点まで一旦下るが,ここはシールのままで滑り下りる.まだ,雪は十分にあり,おおむねどこでも沢を渡れる.ただ,夏道の渡渉点に近付くと北向きの急斜面は,まだ固く凍りついていて,シールを貼ったスキーではエッジが効かずに横滑り中に一瞬コントロールできなくなり,スリル十分であった.
【小三本沢の夏道の渡渉点付近】
小三本沢を渡って沼の平に登り返し,安沢を目指す.沼の平は,ブナの林にいくつもの沼が点在する素晴らしいところで,春の新緑や,秋の紅葉の時も訪れたいところだ.
高度を落とさぬように緩いアップダウンを適当に歩いて行くと,最初に現われる大きな沼越しに特徴的な猿崖が見える.
【遠景が猿崖】
じきに沼の平を後にして,786m標高点から地形図の夏道と別れ,回廊状になった安沢に入り込む.以前来たときは,今日よりも約1カ月遅れだったので,初めの1か所だけ水流が出ていて,ぎりぎり通過できる状態だった.今日の雪はその時に比べるともちろん多いが,以外にも同じところがぽっかりと丸く雪が割れて水流が出ている.周りに雪は十分あって問題はないが,そこのところに限って,水流に向かってそれなりに傾斜があって,しかも雪が固く凍っているので,スリップしないように慎重にやり過ごす.
あとは,両側からのデブリに注意しながら休まずに標高950m付近まで詰める.そこから左手の尾根に取り付くが,今日は,うっかり一つ西側の尾根に取り付いてしまう.まあ,どちらでも問題はないので,そのまま1150mの台地を目指す.この辺の斜面とブナの配置が特に素晴らしい.
【安沢,写真奥の1000m付近から左手の沢沿いに登った.】
【1150m台地へ続く尾根からの安沢方向】
この尾根を登りきると,1150m台地だ.もう急登はない.はるか先に白い山頂の一角が望めるが,まだまだ遠い.ここで,ちょっとパンを食べて大休止する.特に山頂を踏む目的がなければ,ここまでで十分だ.ここまで登ると東側に展望が開け,会津から川内山塊の嶺々が白く連なり,今日は遠くに霞んで御神楽岳までが望める.
【1150m台地,はるか先に白い山頂が見える.】
あとは,ひたすらだらだらと山頂に向けて足を一歩一歩出すだけであるが,標高1300mを超えるあたりでも,まだブナの大きな木があって,元気を与えてくれる.
【標高1400m付近からの山頂方向】
登るにつれ,右手に滑らない早坂尾根が次第にはっきりし,その東側にはずらっと雪庇が並んでいる.山頂に近付くと,クラスト斜面にところどころ最近降ったと思われる雪が現れ,風が一段と強くなる.ようやく人の姿が見える,山頂だ.時計をみると,ちょうど12時.10人くらいが,つよい風の中でそれぞれ休んでいる.
【山頂の祠(3D),奥の白いピークは前岳】
風が強いので,風がないところまで降りてから昼とする.
写真を撮り終えるとすぐにスキーからシールを外して滑りだす.あっという間に…といきたいところであるが,良く滑るクラスト斜面と滑らない腐れ雪がランダムに続く大斜面が延々と広がっている.なんちゃってテレマークには,あまりにも手強い.
まあ,なんとか世間の皆様にはおおやけにできない滑りで,風のない1315mまで降りて,昼の憩いとする.ブナと緩やかな白い雪原が広がる天国,あまりの陽気に昼寝までしてしまう.
【昼の憩いから僅かに下った付近】
まだ寝足りなかったが,気合いで1時半過ぎに出発する.ここまで来ると,もう雪も適当に緩み,それなりに楽しく滑ることができる.1150mの台地からは,以前登った尾根を滑る.ここは,角度も適当にあるので,一番楽しめるところだ.
【中央の狭まったところを抜けると沼の平】
沼の平に入るのに僅かに登り返すが,ステップカットなので,作戦どおり楽々だ.ついでに,小三本沢から山ノ神杉までのかなりの登り返しもシールを付けることなく難なくクリアーする.
【沼の平から小三本沢への下り(3D)】
最後のスノーシェッド近くの斜面が相当に腐れた雪で,ここまで何とか転ばなかったのに,後ろスキーが雪に引っ掛かり二回ほど転んでしまう.
国道289号に出ると,新しいスノーモービルの跡があり,滑らないスキーを走らせ,入叶津に15時半前に戻る.
連休の初日で,こんなに天気もいいのに結局このルートでは,今日は誰にも会わず,トレースもなかった.
あらためて記録をみると,前回このコースに行ったのは,もう13年も前のことだ.その間に山スキーから最近はテレマークに変わり,その他の道具などもたぶん同じものがないくらい入れ替わり,そのほかにもいつの間にか自分自身を含め,いろんなことが変わってしまったが,今日登ってみると,全然変わらずに静かに優しく懐かしい浅草岳がそこにあった.