烏帽子岳・阿弥陀山

個人山行 sue

【日時】2011521日(土)

【メンバー】Y

【天候】曇り時々晴れ

【山域】 海谷

【地形図】 頸城大野

【実録時間】駐車地点06:30 登山口07:45 烏帽子岳 9:55~10:15  阿弥陀山11:50~12:15 登山道14:45 駐車地点15:20


  土日と毛猛山へのお誘いがあった。非常に魅力的な計画で行きたかったのだが、都合がつかず断念する。そのかわりに日帰りではあるが、久〜しぶりに海谷の山に行ってきた。

 

 海谷の山は海谷渓谷を挟んで、西は駒ケ岳、鬼ヶ面、鋸岳と1500m前後の山々が連なり登山道もある。東側は烏帽子、阿弥陀、鉢とこちらも1500m前後の山が昼闇山へとつながっているが、こちらは道がないと思われている。実際に自分自身も道はないものと思っていた。しかし、烏帽子岳には登山道があるらしい。

 そこで、烏帽子岳に行ってみることにした。早く到着できればその先の阿弥陀山にも足が延ばせそうなので軽〜い気持ちで出かける。

 登山口のある谷根集落までは、現在の住まいから車で20分と非常に近い。よく整備された田んぼを過ぎ、山道に入ってすぐに融雪時の落石が片付いてないため車が通れなくなる。そこから歩き出してまもなくロープの張ってあるゲートに着く。しかし、少し先で道はすぐに荒れ、とても車の通れる状態ではなくなる。

 スギ林の中の荒れた道路を1時間以上歩いて、烏帽子岳登山道入口に着く。進むと、「丸山」「土山」と読める古い石標が埋もれかけている。かなり昔から地元で歩かれていた道のようだ。

 最初の916mピークを過ぎると残雪量が多くなりほとんど雪の上を歩くようになる。小さなピークをいくつか越え、頂上手前の最後のピークに立つと目の前に烏帽子岳がそびえる。ここから少し下ると最後の登りとなる。

 狭く急なヤブ道を登っていくと何の前ぶれもなく、いきなり山頂に出る。山頂の岩に手を掛け、顔を上げると、「ウオ〜ッ!!」と、思わず声が出るほどすばらしい景色が広がっている。海谷の山々はもとより火打、焼、雨飾から北アルプスの一端まで見渡せる。足下には吉尾平の雪原。振り返れば日本海。眺めていて飽きることがない。

 

〈烏帽子岳山頂から、昼闇山、焼岳、火打山〉

 

〈烏帽子岳山頂から、阿弥陀山〉

 

 烏帽子の山頂は狭い上に、東側がスッパリ切れ落ちていて、足を踏みはずしたらまず助からない。山頂大宴会を得意とする我が会にはこの山は少し向いていない。

烏帽子岳から阿弥陀山が近く見えたので、稜線上を阿弥陀山へ向かって歩き始める。最初は潅木がまばらに生えた岩稜を快適に下るが、すぐにすごいヤブとなってしまった。豪雪で上に伸びることをあきらめた木々は、横に横にと伸びている。ヤブを掻き分けるという行為ではなく、短い足を目いっぱい上げて木を跨ぐというスタイルになってしまい、なかなか前に進まないばかりか非常に疲れる。

 それでも阿弥陀山の登りにさしかかるころには雪渓上を歩けるようになる。しかし、最後の詰めが急で登れそうになく、再び左側の傾斜のきつい岩の稜線に戻る。岩稜にはびっしり木が茂っていて恐怖感はないものの頭上に覆いかぶさる木の枝が行く手をさえぎり、もがくようにしてやっとのことでこのピークに立った。軽い気持ちで来てコンパクトな荷物だったのが幸いしたが、大きな荷だともっと手こずるはずだ。

阿弥陀山の頂上は主稜線から少し海谷渓谷寄りに外れていて、蟻の戸渡りのようなやせ尾根をたどって到達する。目の前には阿弥陀南峰がそびえているが、もう登る気力は残っておらずパス。

 山頂は狭いが石仏が安置されており、海谷渓谷側には明瞭な踏み跡もある。今来たヤブ尾根を戻る気にはとてもなれず、かといってこの踏み跡を下っても帰れない。帰路となるルートを頂上から探すと、一旦、北斜面の雪渓を下り、残雪を拾いながら右岸の沢を登り返せば、烏帽子岳への登山道がある尾根に戻れそうだ。

 

〈阿弥陀山から烏帽子岳〉

 

 山頂直下の急斜面を迂回するため、まず北に延びる尾根に入ると、ななんと、かすかながら踏跡があるではないか、だが、どこに通じているのかわからない。まっすぐ下れば、あの知る人ぞ知る不動川である。道などあろうはずがない。すぐに右に折れて雪渓を下り、山頂で目星をつけたあたりで登り返す。対岸では海谷名物のブロック雪崩の音が雷鳴のように轟いている。

 登り返してしばらくすると木の枝にピンクのテープを発見する。さらに行くと雪の消えたところには踏跡もある。予期せぬ踏跡に、これはどこへ通じる道なのか、としばし考えたが行き先はあの阿弥陀山の北の尾根の踏跡しか考えられない。この先まもなく登山道のある尾根に戻れたが、往路よりずっと早く、しかも楽であった。阿弥陀山の頂上からは、知らないうちにもともとあった阿弥陀登頂ルートを降りてきたようだ。烏帽子からあのヤブ尾根をたどって阿弥陀に行くおバカはいないのである。

 

〈烏帽子岳への登山道がある尾根。まだ大半が雪の下〉

 

 朝登ってきた道を順調に下り、車についたころには海谷の稜線はガスに包まれ始めていた。まずまずの天気だったが、行動中出会ったのは烏帽子山頂のカモシカ1頭のみ、静かな山行であった。