石見堂岳(山スキー)

個人山行(山スキー,なんちゃってテレマーク)

【日時】201151日(日),2日(月)

【メンバー】T,M(悠峰山の会山スキー突撃隊)

【天候】 1日)曇りときどき晴れのち風雨,(2日)風雪のち雨

【山域】 朝日連峰

【地形図】 赤見堂岳

【実録時間】  1日」  国道112号線(大越橋先標高570m)08:53 − 785m標高点09:42    868m標高点脇10:17    980m標高点ピーク下10:50    1011m標高点下11:20~11:46 <昼休憩>    石見堂岳山頂13:22  2日」  テン場08:12    1011m標高点08:43    980m標高点ピーク下09:00    868m標高点脇09:20    785m標高点09:44    取り付き10:01

 


5月連休の山スキー突撃隊の出撃は諸般の事情により久しぶりにテントを担いで赤見堂岳となった.赤見堂岳は25000分の1地形図の図幅名にもなっているほどの朝日連峰に連なる山であるが,夏道はない.顕著なピークを持つ赤見堂岳と隣り合って対照的な平頂を持つ石見堂岳の組み合わせが大きな魅力となっている.3度目の赤見堂岳を目指し,突撃である.

村上の先まで日本海沿岸東北自動車道が伸びたことや無料の山形道のおかげで早朝550分に家を出ると,840分頃にはもう取り付きの国道112号線大越橋である.橋の先の駐車帯に車を置き,道路脇の除雪によってできた固く締まった雪に靴をけり込み,1.5mほどの雪壁に取り付く.予報と違って,新潟からずっと雨が降り続いていて,残念ながら雨具を着ての登りとなる.

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国道112号線の取り付き

登り始めてわずか,気が付くといつの間にか雨は上がっていて時折日も差す.暑くて汗が噴き出す.思わず上下の雨具を脱いで登りなおすが,荷物があるせいか,やっぱり暑い!

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【標高670m付近】

登り始めから立派なぶなの林が続く.標高700m付近から,はっきりと伸びる尾根に上がるが雪庇の具合によりいつもこの尾根に上がるのに一苦労する.今日も微妙なシュルントが出来ているが,なんとかスキーで上がる.

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【標高700mから785m標高点へ続く尾根】

ここから785mの標高点までは,木が邪魔にならない雪堤の上を直登するが,帰りは,左下の急斜面を行く方が自由に滑れて快適だ.

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785m標高点】

785mの標高点に出ると今までの急登から開放され,概ね西方向に大きく方向を変える尾根をたどって行く.この尾根からは国道112号線が見え,車の音も聞こえてくる.一箇所だけ細くなった尾根筋の雪が切れていて,左側の斜面をわずかにトラバースするが,あとは緩やかな尾根を気持ちよくのんびりとたどるだけだ.途中,木の間越しに雲の切れた湯殿山が望めるが,月山は姥沢から上が厚い雲の中だ.

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868m標高点】

じきに868m標高点が見えてくると,その手前で南西側の尾根に約90度向きを変える.ようやく車の喧騒から開放され,快適な尾根を歩くことができる.

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868m標高点から南西に伸びる尾根】

とりあえず980mピークを目指すが,地形図のイメージよりも実際はゆったりした尾根で,終始大きなぶなが適当な間隔で続き素晴らしい.当然ここで小休止とする.

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【標高910m付近/3D

右手に雪庇が発達した顕著な尾根が見えてくると,それが980m標高点ピークである.このピークは遠目に葛飾北斎の富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」の波形のような形をしていて,帰路には良い目印となる.

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980m標高点ピーク(写真,雪庇が終わる下部の雪が切れている下を通過する.)】

ここは,ピークの直下をトラバースする.もっと下を巻いて行けば無駄なく1011m標高点への鞍部に行けそうだが,地形図には表現されていない沢が意外と深く,段差もできていたりして,どうやらここを通過するのが無難なようだ.

そこをやり過ごすと,一旦50mほどシールのまま鞍部まで下る.そこから逆くの字状の1011m標高点のある台地までの登りが,今回の登りで最も急な斜面であるが,それも標高差で60m程度だ.前回は,向かって右手の溝状にえぐれたところを詰めて登ったが,今日はそのまま正面の斜面に取り付く.

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1011m標高点付近から望む月山】

この急斜面を登り切り,振り返ると月山,姥ヶ岳,湯殿山がそろって望めるが,次第に雲行きが怪しさを増してきている.風も結構強くなってきた.1011m標高点下の比較的風の当たらないところでお昼とする.

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1011m標高点から望む石見堂岳】

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1011m標高点から望む赤見堂岳(矢印)】

1011m標高点に上がると進む先に初めて赤見堂岳がその姿を現す.石見堂岳は顕著なピークがないため頂上台地のへりが見えているだけだ.

この辺りからちょっと地形が複雑になるが,大きく広がった尾根の登り降りを繰り返しながら徐々に高度を上げていく.

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【標高1120m付近】

山頂にほど近い1133m標高点の付近でいよいよ雨足が強くなり,仕方なく再び雨具を着る.それにしてもこの辺りでもまだまだ大きなぶなの木が点在しており,巨大な雪堤や広大な雪の斜面との配置が素晴らしい.

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【矢印が山頂の「山小屋」ではなくて問題の露岩】

さすがに頂上台地へりの1250mくらいからはぶなの大木はなくなり,灌木ばかりとなる.いくつかの灌木帯を抜けると山頂の一角に「山小屋」の三角屋根が見えてくる.もちろん夏道もないこの山に山小屋があるはずもないが,今のようにインターネットで沢山の情報が得られない頃に初めて同ルートで最後の灌木帯を抜け,ちょっと先の山頂方向を見たときには本当にこんなところに「山小屋がある!」と思いましたね.同行の山スキー突撃隊長もそう思ったくらいですから.何の予備知識もなくここに来た人はそのシルエットからきっと山小屋だと思うこと間違いなしです.

まあ,近づくにつれ,それは意外にも小さな何の変哲もないただの山頂露岩であることがすぐに判明しますが,間違いなく結構印象に残ります.ただし,これを読んだあなたには残念ながらその楽しみはもうなくなりました.残念!

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【山頂台地直下のテン場】

風が少々強く,山頂の平地にテントを張ることはあきらめ,少し戻ったわずかに段差がついた場所を削ってテン場とした.今回は,軽さよりも快適さを優先し,3人用を持ってきた.ただしフライは冬用ではなくて軽い普通のものにした.ところが,それをいつ使ったかも覚えていないくらい放っておいたうえに確認しないで持ってきたのが大失敗であった.なんと内側のコーティング同士がへばり付いていてうまく広げることができない.急速に風が強くなる中二人がかりで無理やりなんとか剥がして張ったけれど,おそらくそのためにコーティングが剥げてしまい,後で知ることになるがフライとして雨を防ぐという一番大事な機能が失われたのであった.とほほである.

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【標高1200m付近/3D

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【写真矢印が鍋森】

テントを張っている頃には雨も上がり,T隊員の強い要望により平成23年度赤見堂岳ビール消費大綱に基づく計画を先送りし,早くもテント内でくつろぐもまだ暗くなるには時間があったので,ちょっと下まで一滑りしてくる.

どこも素晴らしい斜面で,なんとか自制心を振り絞り標高差で150mほど下ってやめる.T隊員がシールを付ける間にその辺を散策していると,北西の方角に赤見堂岳へ連なる尾根の一角に鍋森が見える.

夜半,夜の憩いも終わり,いつの間にか寝入っているとドスンという音に目が覚める.強烈な風でテントが揺れているのであった.雨音もバチバチと強力だ.寝ぼけ頭でテントごと飛ばされるとどこまで落ちるのだろうか,木に激突するだろうか,無事止まっても靴がないのに帰られるのだろうかなどと様々なことがよぎったが,そのまま横になっているうちに再びいつの間にか寝てしまったり,また目を覚ましたりを繰り返す.

それでも,立てかけておいたスキーが心配になり,気合いを入れて外に出てみると,それほどの風でもなく,せっかくなので一応スキーを飛ばされないように横にする.月山の方を見ると高速道路の明かりだろうか意外と人口の光が多いことに驚く.

これで安心して横になったが,テントが風で揺れるたびにフライから漏れた雨水がテントの本体越しに飛び散り,雨降り状態となるのにまいった.しかし,いつしかそれでも人は寝てしまうのである.

朝になっても風は収まらず,むしろ強くなっているようだ.おまけに雨音もバチバチと相変らずであるが,なぜか雨漏りはしなくなったようである.しないはずである.いつの間にか雨は雪になっていたのである.それほど寒くはないが,驚いたことに3cmほどの雪が積もっていて外は真白である.

朝飯を食べ,しばらく様子を見たが,天気は好転しそうもなく視界のない中強行しても楽しくないので,早々に赤見堂岳はあきらめて帰り支度をする.

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【テン場撤収/2日】

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【テン場から下山方向】

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【標高1140m付近から下山方向】

標高1100mくらいまでは今朝降った新しい雪がざらめ雪に乗っていて,重荷を担いでいても実に滑りやすくて楽しい.雪が顔にあたって痛いが,この楽しさに比べれば大したことはない.広くてどこでも滑られるが,1011mの標高点までは,慎重にルートを選んで滑る.小さな登り返しは多数あるが,どれもなだらかな起伏で変化に富み,いかにもたおやかな東北の山を滑っている気がして,それも楽しい.

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1011m標高点への登り返し】

1011mの標高点に至るとそこから下からは,さすがに夜中も雪ではなくて雨だったようで,それほど滑らないざらめ雪になる.振り返ると石見堂岳は雪雲の中である.

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1011m標高点から980mピークの鞍部へ至る漏斗状地形部分の雪堤】

1011mの標高点からは,登ってきたところではなく,漏斗状となった大きな溝に滑り込む.それにしてもすごい雪堤が出来ている.

980m標高点ピークへの鞍部に滑り降りると,いよいよ本日一番の登り返しである.T隊員はここでシールを付けるので先に登って待つ.

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980m標高点ピーク直下のトラバース】

登りと同じところをトラバースし,その先で少し休んでから再びぶな林を快適に滑る.どこでも好きなように滑ることができるようだが,尾根筋の一部には木が密になっているところもあるため,どうしても尾根の雪庇側を滑ることが多くなる.雪の状態によってはシュルントが出来るところもあり,過去には隠れていたそれに見事にはまって転倒したこともあったなどと思いながら滑っていると,あっという間に868m標高点が見えてくる.

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868m標高点】

ここで向きを変え,さらに登り降りを繰り返して徐々に下る.ところが,登りで一部雪が切れているためにトラバースしたところをすっかり忘れていて,地図も確認しないでつい768m標高点よりも手前の尾根に少しだけ降りてしまうが,すぐに引き返す.どうも3度目ともなると慎重さに欠けてしまう.

768m標高点を過ぎ,登りの尾根筋を外れ,右手の急斜面を適当にトラバース気味に滑るうちに国道112号線が見えてくる.この辺りまで来ると,雪の上には折れた枝や枯れ葉などでそれなりに汚れている.スキーを外して国道112号線を渡るが,ちょうどカーブになっていて通過車両のスピードもそれなりで,車の切れ目を狙って素早く横断する.今回の山行で最も危険なところである.こんなところで遭難はしていられない.

道路事情により,以前よりも早く登り始めることができるので,軽装であれば赤見堂岳の往復も日帰りで可能だろう.しかし,この山は天気のいいときを見計らって石見堂岳あたりでもどこでも好きなところに堂々とテントを張ってぶなと残雪にどっぷりとつかるのがふさわしいのだ.

 

登路         降路