金 山 沢 (白馬栂池)

個人山行 sue

日時】 2012320

【メンバー】 Y

【天候】 晴れのち曇り時々小雪

【山域】 北ア

【地形図】 白馬岳、白馬町

【時間記録】 栂池ロープウェイ終点09:00 船越ノ頭13:00 金山沢合流点15:00 二股16:00


白馬栂池エリアは日本でも有数の山スキーエリアだけあって人が多い。スキー場に着くとゴンドラのチケット売り場にはすでに行列ができていた。ゴンドラから乗り継ぐロープウェイもピストン輸送で運行している。

ロープウェイの終点からは天狗原方面へ向う登山者のほうが栂池自然園方面よりもずっと多い。スキーヤー、ボーダーだけでなくスノーシューで周辺を散策する人も多いようだ。

 

ゴンドラ乗り場では雲ひとつない晴天だったが、ロープウェイを降りる頃には薄雲が広がっていた。

歩き始めてすぐに栂池自然園に入る。白馬岳を正面に見ながら平坦な栂池湿原を過ぎると、新雪の積もった広い尾根を登るようになるが、しだいに傾斜が急になる。上部は風で新雪が飛ばされておりガリガリのバーンが出ていてスキーアイゼンでの登行となる。

標高2300mを越えた辺りから左に回りこみ、金山沢の上部に出る。最上部は沢というよりは、ほとんど木のない真っ白で広大な凹状斜面だ。

 

《栂池自然園から 右側奥が金山沢最上部、左奥が白馬岳》

 

金山沢最上部の急斜面はアイスバーンになっているとかなり手ごわそうなので、上には向わずそのまま金山沢を下るつもりでいた。が、そのとき稜線から2人のボーダーが雪を飛ばしながら滑り降りてくるのが見えた。最上部はアイスバーンではないのだ。天気は下り坂だが視界は十分あり「これは行ける」と思ったのだが・・・。

 

稜線には雪庇が張り出しているところがあるので、ドロップポイントを下からよく確認して登り始める。船越ノ頭(2612m)を直接目指すと最後がかなり急そうなので、傾斜のゆるそうな一番右側のピークを目ざす。振り返ると登っているのは自分だけ、他の人はそのまま金山沢を下ったようだ。

ラッセルを終え稜線に出ると新潟県側からの風がきつい。稜線を小蓮華方面に向かい船越ノ頭を過ぎるとドロップポイントはすぐにわかった。しかし、金山沢をのぞきこむと・・、濃いガスで何もわからない。

傾斜が急なので慎重に降りることにし、先行者のトレースを追って金山沢に入る。が、真っ白、ホワイトアウトだ。自分のスキー以外は雪面と大気の境も分からない。ただひたすら横滑りで降りるしかない。いったい何のためにここまで登ってきたのか。

 

しばらくすると傾斜が落ちてきた。ゆっくりとターンをしながら降りていると、自分が動いているのか止まっているのか分からなくなりいきなり転倒。ホワイトアウトで平衡感覚がおかしくなってしまったのだ。けれど前方には2300mの台地が見えてきたし、視界が良くなってくれば平衡感覚も回復するだろうとあまり気にしないでいた。ところが症状はさらに重くなり吐き気まで伴ってきた。

 

少し滑っては転倒と吐き気の繰り返し。稜線上が強風だったので2300mの台地で休むつもりでいたが、食欲は全くないしビールなど見たくもない。そのまま右に折れて金山沢を下ることにする。

金山沢はここから沢地形がはっきりしてくる。ルートはやや急な斜面が続いており、横滑り、斜滑降、ボーゲンを繰り返す。視界は少しずつ良くなってはいるものの平衡感覚は回復しない。ゆっくり休めばいいのだろうが、沢にはデブリが出ているし、雪も降り始めてきた。ここで長居をするわけにもいかない。二股まではまだまだ遠い。吐き気の気持ち悪さをこらえて下り続ける。

 

すっかり霧の中から出たのは金山沢も本流との合流点に近くなってからだった。稜線からの標高差1200mをほとんど横滑り、斜滑降、ボーゲンで降りてきてしまった。

視界が良くなってからは体調も回復し二股までは快適に飛ばせたが、まともに滑れたのは肝心の金山沢を出てからの道路上だけだった。

 

《金山沢 本流合流点近く》