明 星 山

個人山行 sue

日時】 20121122

【天候】 晴れ

【山域】 頸城

【地形図】 小滝

【時間記録】  ヒスイ峡登山口7:00 9:30明星山頂上9:40 11:20ヒスイ峡登山口

 


11月会定例山行の明星山は最小催行人員(1名)に達しなかったため、残念ながら中止となりました。そこで、今回は明星山を知らない人のためにヒスイ峡から登る明星山のご案内です。

 

明星山は近年、地元でも「みょうじょうさん」と呼ぶようになっていますが、もともとは「みょうじやま」と呼ばれていたようです。小滝川をはさんで対岸にある清水山は「しょうずやま」です。「みょうじやま」に「しょうずやま」似ています。「明星」も「清水」も当て字だと思いますがなにか関連があるのでしょうか。

 

明星山は糸魚川の市街地方向から見ると山頂付近しか見えませんが、南側にある高浪ノ池から見ると全容がよくわかります。オニギリの形をした巨大な石灰岩のかたまりです。

《高浪ノ池と明星山》

 

糸魚川インターを降りて国道148号を松本方向に進み、姫川にかかる3つめの橋、大正橋にさしかかると白い岩肌をあらわにした明星山が間近に見えてきます。大正橋を渡ってすぐに右折し、集落を過ぎて小滝川沿いに進むと明星山がますます大きくなってきます。

そして最初に出迎えてくれるのが、小滝川をはさんで正面に見えるド迫力のP6南壁です。これだけのスケールの岩壁を車からごく間近に見られる所は他にはないと思います。大きすぎてカメラに収まりません。時々クライマーの姿を見ることがありますが、小さな人間と比べるとこの岩壁の巨大さがよくわかります。登山コースではこんな所は歩かないので安心してください。

《明星山P6南壁》

 

南壁の上流側の端から更に上流100mほどの間の小滝川は「小滝川硬玉産地」として天然記念物に指定されています。巨大なヒスイの原石が点在していますが、天然記念物なのでここでのヒスイ採取は禁止です。もっとも原石は1個数トンから数十トンもあるので、フツーの人は持ち出すことは不可能です。小さな石は流れ出てしまっているので糸魚川の人たちは海岸でヒスイを拾います。

付近一帯は高浪ノ池とともに観光地化されていて、フィッシングパーク(イワナの釣堀)、キャンプ場、展望台、土産物店などがありますが、11月上旬でどこも店じまいとなります。

 

さて、肝心の登山ルートの紹介に入りましょう。車道をさらに上流側に進み舗装が切れたところで小滝川にかかる橋が見えます。登山口はこの人間および野生動物専用の狭い橋です。道路脇の駐車可能台数は56台ですが、この登山道の利用者数を考えれば十分な広さでしょう。橋の入口の柵は開かないので、またいで越えることになります。私のように足の短い人には、このルート上最大の難所となります。

《「積雪のあるときは通行禁止」と書いてある》

 

橋を渡って右に折れるとすぐに左側に登り口があります。入口の道標には「登り3時間、下り2時間」と表示されていますが、これはあまり余裕のないコースタイムです。のんびり歩いているとオーバーしてしまうでしょう。

最初は薄暗いスギ林の中を歩きますが、しだいに雑木林にかわってきます。木の葉を落とした枝越しに明星山西面の岩壁が見えてきますが、こちらもなかなかの迫力です。

岩壁に近づくと背の低い雑木林と石灰岩のガレ場を交互に歩くようになります。ガレ場からは、右手に屏風のように連なる西壁末端の垂壁帯が、左手には北アルプス北端の山々が見渡せて独特の雰囲気がありいつまでも眺めていたいところです。

   

《西壁末端の垂壁が連なる》

 

特に紅葉の時期は白い岩壁と紅葉のコントラストが際立ちます。垂直の岩壁を見ながら歩くガレ場のルートは、まるで北アルプスの登山道を歩いているような錯覚にとらわれます。ガレ場は道のわかりにくい所もありますが、テープや赤ペンキの目印は数多くあります。少し注意していれば道を見失うことはありませんが、周りの景色に気をとられていると1回くらいは間違うと思います。

   

《広葉樹の種類が多く紅葉も多彩》

 

ルートは標高700m付近でサカサ沢に近づき道の傾斜も増してきます。サカサ沢は南に開けていて日当たりがいいのですが、今回はこの辺から雪が現れ始めました。雪上にはいろいろな動物の新しい足跡があり、クマもまだ冬眠に入っていないようでした。

右手の垂壁帯が終わりさらに少し登ったところでルートはいったん左に折れてサカサ沢に降りますが、水の中を歩くことなく通過できます。50mほどですぐにまた右側斜面を登り返します。登り口を見落とさないように注意が必要です。悪そうな所もないのに、なんでいったん沢まで降りるのか疑問に思うルートですが、水場に立ち寄るものと思ってください。

《わずかな間だが沢の中を行く》

 

ところどころぬかるみのあるブナ林の中を進むと、やがて岡集落への分岐に着きます。分岐からは右にルートをとり小沢を越えて竜護尾根に取りつきます。竜護尾根は北に延びているので、尾根の基部は日が当たりません。薄暗い上に積雪量も増えてきました。しかも真冬の様なサラサラの雪です。適度にビニールテープがつけてあるし動物の足跡が先導してくれるので、ルートが雪に埋もれていても迷うことはありませんでした。

《竜護尾根末端付近》

 

竜護尾根の下部はけっこう急傾斜で鎖場も何カ所かありますが、鎖を取りつけている木が朽ちているところもあり過信は禁物です。

竜護尾根は山頂に近づくにつれ傾斜が落ちてきますが、痩せた尾根上には大きな石灰岩がごろごろ出てきて、大岩をぬって歩くようになります。竜護尾根はもしかしたら竜後、竜の背中のことかもしれません。ごつごつした岩尾根です。

岩の間には丈の低いスギやネズコが生えています。白骨化した木もありなかなか趣があります。盆栽で有名な糸魚川真柏もありますが、現在は採取禁止です。けっして持ち帰ろうなどという気は起こさないでください。木が低いので展望は良好で気分よく歩けます

《竜護尾根上部》

 

最後にわずかに急登を登れば頂上です。表面が浸食された石灰岩の脇に山頂を示す標柱が立っているだけのシンプルな頂ですが展望は抜群です。白馬岳以北の山々、頸城の山々、そして日本海まで見渡せます。木の葉が視界をさえぎる時期には、皆さん山頂から少し先の木のないピークまで行って展望を楽しんでいるようです。

   

《明星山山頂》                  《左奥が白馬岳》

 

無風快晴の小春日和の中、明星山をひとり占めしてきました。

 

明星山の登山適期は11月上旬から中旬にかけて、紅葉も最終盤の頃がベストです。冬期は岩壁から頻繁に落ちてくる雪のためヒスイ峡ルートは使えませんが、岡集落からのルートで登る人が稀にいるようです。残雪期のヒスイ峡ルートは急な雪渓のトラバースに注意してください。夏場は猛暑の中でのヤブ歩きを苦にしない人にしかお勧めできません。

明星山と言えばすぐにロッククライミングが思い浮かびますが、一般ルートに関してはクライミング技術はまったく不要で誰もが登れる山です。ぜひこの巨大な石灰岩のかたまりにトライしてみてください。ピークハントだけが目的であれば岡集落からのルートのほうが容易ですが、明星山をじっくりと味わうには断然ヒスイ峡からのルートです。

 

 

(掲載した写真には1週間前に撮影したものもあります)