梶川峰(飯豊連峰保全事業)

個人山行

【日時】201397日(土)

【メンバー】Oza1 M

【天候】曇り/雨

【山域】飯豊山

【地形図】飯豊山・長者原

【実録時間】

梶川尾根登山口(標高480m05:02 − 楢曲がり 05:35 湯沢峰 06:28 滝見場 07:21 五郎清水 08:00   資材デポ地 07:21 梶川尾根周辺作業(途中昼食休憩) 09:4214:22 登山口 16:03

 


今年の飯豊山保全作業(登山道修復)の実施場所は,昨年に引き続き日帰りで梶川峰周辺である.作業現場の一番高いところでまでの標高差1300m+修復作業での登り降り約100mの標高差,合計約1400mを登って整備作業をして帰ってくるのである.参加資格に「約1,300m登った後,作業し,下山できる体力のある方」とある.それなりに辛いのである.資格があるかどうか不安でもある.

しかしながら今年は初めて同士がいる.なんと悠峰隊員約2名で突撃!である.

当日は,天狗平ロッジに早朝04:00集合のため,前夜金曜日のうちに新潟を出発し,天狗平ロッジに泊まる.翌朝に備えてテラスの宴会には参加せず,空いている部屋で布団を敷いて眠りにつく.

翌朝,総勢約50名が3班に分かれて出発する.残念なことに私が1班でOza13班に分かれてしまう.

1班は梶川峰下のトット場のカッチ付近,3班は標高1800m付近のガレ場である.簡単に本日の作業計画の説明を受け,先頭の1班が登り始める頃には午前5時を少し過ぎていた.

まだ暗い梶川尾根に各自ヘッドランプを点けて湯沢峰への急登に取り付く.本日の先頭は,昨年よりも少々ペースが速い.皆さんは,かさばって重いスコップなどを担いでいる.それにひきかえ,椰子ロープ5本総重量約200グラムの資材を担ぐのみの私としてはペースが速いとは,とても言えない.

途中,楢曲がり,湯沢峰,滝見場,五郎清水で休憩する.湯沢峰で休んでいると,心配していた雨が降ってくる.雨具を着ようか迷ったが,傘を差して登ることにする.

湯沢峰からダイグラ尾根(中央奥):3D

雨はすぐに小雨となり,傘をしまう.ときおり青空がのぞくときもある.下を見ると,雲海が広がっていて山に来たなと思う.

以前は7本あったという3本カンバまで来ると,結構登ったという気になる.梶川峰までは,じきである.

梶川峰下のトット場のカッチ付近の登山道脇のチシマザサが事前に刈り払ってあり,1班はそれを使って修復作業をするのである.

とりあえず,標高1720m鞍部付近の資材デポ地まで登る.

有志が担ぎあげた麻ネット,椰子繊維製の土嚢袋,椰子繊維を各班が必要分を手分けしてそれぞれの作業現場に持っていく.下になって水を吸った麻ネットは,随分重そうだ.

我々1班の現場は,土嚢袋と椰子繊維に針金少々なので数人が持つきりである.ボランティアでは,やることが無いと少々がっかりするものであるが,ここではなぜかほっとするのである.

梶川峰からそれぞれの作業現場(見えている一番奥のガレ場が3班,その下の鞍部付近が2班)

一旦,梶川峰まで下り,そこに荷物をデポしてそれぞれの作業道具を持って,更にトット場のカッチまで下る.刈り払ったチシマザサを集めて苦労して担ぎ揚げた総重量約200グラムの椰子ロープを使い,それを持ち運べる程度に縛って登り返し,大きく抉れた登山道に並べ,仕上げに椰子繊維と土を詰めた土嚢を重しにする.

水勢を弱め,土砂を固定するのである.付近にある粗朶(そだ)を使って補修をする粗朶工法である.登山道の崩壊は,一見人の踏み付けによると思われがちであるが,それはきっかけであって,実は水が削っているのである.

水を制する者が登山道の修復を制するのであ~る!(技術指導員及び山形大学教授の受け売りです.)

粗朶工法施工例

お昼の休憩を挟み,刈り払ったチシマザサが無くなったところで1班の作業は終了となり,恒例の「振り返り」(担当者による作業結果の説明及び学識経験者による解説・指導のことで,いつも聞くふりをして景色を眺めている人(私)はいけない「聞くふり返り」の人です.申し訳ない.)のため,3班の作業現場に向かう.

この3班の標高1800mのガレ場は,遠くからも分かるくらいに裸地化しているところである.昨年は,ここでネットを敷いたりしたのである.

下山予定は午後2時なのであるが,2班も3班もまだ作業を続けている.3班のネット張りを手伝う.

このネット張りは,土砂が露出している部分に用いるもので,主にネットと飛散防止のために置いた石によって飛んできた種を固定したり,氷柱による根切れを防いだり,風の力を弱めて植物の進出を図るものである,ようなのだ.しかも,麻製のネットは,植物が定着する頃には自然に風化するのである(とのことです.).

1800m付近のガレ場

昨年の施工場所を見ると,僅かではあるが緑が点々と育っているのが分かる.ネットを広げてその辺の石を置くのを手伝っただけであるが,厚かましくも自分がやったような気がしてなんとなく嬉しい.

昨年の施工現場

標高1750m付近に残る雪渓

全ての資材を使いきり,集合写真を撮り終わると同時にぽつぽつと雨が降り始める.

雨具を上だけ着ると「振り返り」もそこそこに梶川峰のデポ地に戻って下山する.雨は降り続き,やむ様子はないが微妙な降りである.そのまま上だけを着て下山するが,我慢できなくて結局登山口まであと僅かのところで雨具を脱ぐ.

慎重に湯沢峰を下るが,きつい!なにしろスキーを使わない登山は,昨年のこの梶川峰保全作業以来なのである.登りはともかく下りに使う筋肉は普段使っていないのだ.昨年は高度計を頻繁に見て,その度にがっかりしたので今回は全く見ないで下った.そのせいか,昨年よりは随分楽に降りることができた,気分的に.

登山道は人が歩かなくなるとすぐに藪となってしまうが,人が歩いていても定期的に藪払いをしないとやはり藪になってしまう.登山道を使って山に登ることができるのは,誰かが汗を流しているのである.

いつか,梶川尾根を登る機会があって,トット場のカッチで粗朶工法のチシマザサを踏むことがあったら,下から担ぎあげた汗と涙のしみ込んだ総重量200グラムの椰子ロープを思い出してもらいたい.