三岩岳>大戸沢岳>会津駒ケ岳

個人山行(なんちゃってテレマーク)

【日時】201354日(土)〜5日(日)

【メンバー】MT(悠峰山の会山スキー突撃隊)

【天候】晴れ

【山域】南会津

【地形図】桧枝岐+会津駒ケ岳

【実録時間】

4日≫ 国体コース登山口(標高770m09:36 − 標高842m無線中継所 09:57 標高1115m付近(シール登行開始) 11:18 黒檜沢夏道出合い1285m鞍部 11:47 <昼の憩い> 12:12 三ツ岩小屋 14:28 <テント設営> 15:09   三岩岳山頂 15:3915:44 三ツ岩小屋15:52 <テント泊>

5日≫ 三ツ岩小屋06:59    三岩岳最高地点 07:59  2060m標高点 08:23  1918m標高点 09:05 大戸沢岳 09:52 <昼の憩い> 10:26 会津駒ケ岳山頂 11:0711:26 標高1320m付近(スキー終了) 12:05 夏道登山口 12:40 林道入口 13:03 アルザ尾瀬の里バス停 13:19


 このところの大型連休には月山周辺に出没していたが,今年のゴールデンウィークは,久しぶりに同じ東北でも福島は南会津の三岩岳から会津駒へ抜ける縦走山スキー「君は天国を見たか」作戦を満を持して決行する.

まずは小豆温泉スノーシェッド手前の路側帯に車を置いて,国体コースの登山口に取り付く.最初から急登である.徐々に体を慣らしてから本格的に登るということはできない.

国体コースは尾根筋に付けてあるため,この時期,標高で1000m以下はいつものように雪が無いのでスキーをザックに付けて歩く.重い!家で計ったところ,なんと26kgw以上ある.といってもスキーと水素と酸素に少量の炭素を主成分とする常温で液体の物品のせいで重くなっているので仕方がない.10年前に突撃隊3名で同じルートを登った時も十分重いと思ったが,月日が流れるほどにやっぱりなお重い!

とりわけ下の写真で見える古くなった木でできた崩れかかった階段に落ち葉が積もった登山口は登りにくいこと甚だしい.だらしなく先が伸びたテレマークブーツには試練の取り付きである.思わず手を使ってしまう.ハンドである!

問題の国体コース登山口取り付きの階段(中央右)

重い荷にあえぎながらも登らなければ先は無いのである.汗をかかないようにゆっくりと亀のように登るが,それでも汗がにじみ出る.

急坂を標高差で100mも登ると無線中継所のアンテナがあるピークに出る.一旦僅かに降るが,すぐにまた急登が続くうえに,倒木が登山道を塞いでいるところもある.しばらくは,試練の登りである.忍者ハットリ君である.「忍,忍」である.

標高1115m付近

標高1000m付近から,登山道にも雪が出るようになる.廻りに見える山肌にも雪が目立つようになる.ようやく標高1100mを越えるあたりで雪がつながる.すかさずスキーをザックから降ろして,スキーで歩く.同じ登るのでもずいぶん違う.だいたいスキーが枝に当たらないように気を使わないだけでも,天国に近付けるような気がする.

三岩岳:標高1250m付近から

1308m標高点ピークの手前で,三岩岳の西面と山頂が望めるようになる.山頂下に広がる雪が付いていない黒い崖が三岩岳を印象的なものにしている.

これから登る尾根

1308m標高点ピークは踏まないで,東側を僅かに巻いて黒檜沢からの夏道と出合う鞍部を目指す.前方に,これから登る尾根が次第にはっきりと見えてくる.

標高1285m鞍部:3D

夏道出合いの鞍部で昼飯にする.この辺り一帯はブナの林である.風も弱く穏やかな気分になれる.天国に近付き煩悩も少しは減るのであろうか.

ときおり下山するする人たちが通り過ぎていくが,意外なことに登る人には出会わない.

昼食後は1699m標高点へ尾根なりに登る.出合い鞍部から1699m標高点までは,同じような急登が続くが,シールも良く効いて青空に映える真っ白な雪と優しい木肌のブナを眺めながら,ゆっくりと歩みを進める.

高度が増すほどに視界が開け,窓明山も見えてくる.昨日降ったと思われる雪が春の残雪を隠して綺麗である.そして,ところどころフイルムクラストの名残があって,歩くとパリパリ音を立てたりする.

三岩岳:標高1660m付近から

1699m標高点付近から上は,ブナからオオシラビソの林に変る.オオシラビソなどの針葉樹の林は葉を落とさないので,ブナなどの広葉樹の林と違って日が差さない暗い中を歩きがちだ.雪があればその林を避けて歩くことができる.もっとも,三岩岳のオオシラビソは雪に埋まっているせいか比較的まばらなので,どこでも自由に歩けそうではある.それでも風による大きなえぐれが至るところに出来ているので,自然と開けたところを歩くことになる.

1699m標高点付近

1816m標高点付近から山頂方向:3D

1816m標高点付近から,目を凝らすと三ツ岩小屋の屋根がオオシラビソの林の中にかろうじて確認できる.大量に付いたつぼ足のトレースと別れ,避難小屋を目指す.

避難小屋東側にある小さな2階の窓から出入りする.:3D

小屋西側

避難小屋に至ると,1階は完全に埋まっていて東側の小さな2階窓から出入りするようになっている.覗くと,まだ誰もいなくて真っ暗である.黄金週間を利用して,尾瀬のかっぱ山あたりからお化けが遠征してきそうなので,本日はテント泊とする.

小屋の西側には一人用のテントがすでに設営されていて,我々も風を避けるように小屋のすぐ脇に整地をしてテントを張る.

三岩岳山頂直下

テントの設営を終え,空身で三岩岳まで往復してくる.午後三時をまわっているので,雪面はすでにクラストしている.避難小屋からは30分ほどで三角点のある山頂に行くことができる.山頂近辺にはもう誰もいない.

山頂でシールを外してスキーの準備をしているときに,ふと会津駒ケ岳のほうを見るといつの間にか暗い灰色の雲が広がっている.天気予報では,明日も晴れるということを信じよう.

三岩岳山頂から,もう一つのピーク

テントに戻って夜の憩いに突入しようとする頃に小屋泊まりのパーティーが到着する.本日は,この周辺で3パーティーのみ(たぶん)の静かな夜だ.

寝返りを約131回打ったところで,T隊員から5時起床の知らせが入る.外に出ると,昨日の暗い雲が三岩岳にもかかっていて,風も強い.このまま視界が無かったらここから,下山も仕方がない.ただ,ときおり薄雲を通して太陽が見えたりもしている.

それでも朝食を食べている間に,テントの中にいても次第に日が差してきているのが分かる.なんと予報どおり出発する頃には見事に晴天が広がっていた.

再び三岩岳山頂を目指す.

今日は昨日とルートを変えて,三角点の山頂ピークの北側を巻いて,標高の高い西側のピークに直接登る.山頂付近には最近のものと思われる樹氷がそれなりに出来ている.

山頂付近の樹氷

奥のピークが三岩岳三角点山頂ピーク

登り始めた頃には山頂が雲に隠れていた丸山岳も次第に雲が切れて姿を現すが,少し霞がかかっているのが残念だ.丸山岳の奥にかすかに守門岳,浅草岳も確認できる.先週登った守門P1099峰も見えている筈だ.毛猛三山の左後方に見える未丈岳が意外と白く立派に見える.

高幽山・丸山岳,奥に浅草岳と守門岳

ここでシールを外し,ウロコ板で会津駒ケ岳まで進撃だ.会津駒ケ岳ははるかに遠い.10年前はザラメ雪のポカポカ陽気の中を歩いた記憶があるが,今日は真冬のようである.凍っていない部分の雪も風でパックされて固く締まっている.

中央奥右のピークが会津駒ケ岳(更にその奥に燧ケ岳のピーク)

雪庇から落ちないように慎重に滑る.幅は十分あるが,固く締まってでこぼこの雪のために滑りにくく楽しめないうえに,すぐに次の2060m標高点ピークへの登りとなる.ここが手強い.凍っているところはウロコが効かない.階段登行を交えつつ,息をこらしてなんとかクリアーする.

三岩岳:2060m標高点ピークから

2060m標高点の次のピークである2057m標高点への登りはあまりに辛そうなので, 急遽2057m標高点は巻くことにする.標高2020m付近の鞍部から真っ白な西側斜面を標高1950m付近までトラバース気味に滑り降りることにする.凍っていたら気を付けないといけないが西斜面のため,すでに日が当たって雪は緩んでいて快適に滑ることができる.

【標高2020m付近から綺麗な西斜面をトラバースする.

標高1970m付近の雪庇が切れているところで大戸沢岳へと続く尾根に戻る.ここから1918m標高点の鞍部までが厳しい.幅のない大きなうねりを伴った雪庇が続いているので仕方なくオオシラビソの林内を滑ることになるが,まだクラストしているうえにでこぼこが大きく実に滑りにくい.トラバースのまま1918m標高点の鞍部まで滑り降りたほうが良かった.

2057m標高点ピーク(左)と2060m標高点ピーク(右):標高1950m付近から

当初はなるべく労力をセーブするために大戸沢岳の北側を巻いて行こうと思ったが,このクラスト斜面にウロコ板では歯が立ちそうもないので,尾根なりに登る.こちらは日が当って雪が緩んでいるはずである.もっとも労力を惜しむなら,初めから山に登らない訳で,ここは普通に大戸沢岳経由で行くのが正しいのであろう.

大戸沢岳への登り

予想通り尾根なりの雪は緩んでいて,なんとかウロコ板のままで大戸沢岳に登り詰める.

腹も減ったし,ちょっと早いが,ここで昼の憩いとする.最後の水素と酸素と少量の炭素が複雑に絡み合った常温で液体の物質を摂取する.まだ,会津駒ケ岳への登りがあるのにこれでいいのだろうか.いいんです!

会津駒ケ岳:大戸沢岳から

会津駒ケ岳に至る頃には雪も十分に緩み,ウロコ板でもそれなりの角度で難なく登ることができる.山頂に近付くにつれ,人の姿があちこちに見えてくる.

三岩岳と会津駒ケ岳間で出合った登山者は三ツ岩小屋泊まりの同ルートの2名と逆ルートの単独行者約1名だけの静けさであったが,次第に人の気配が濃くなる.

会津駒ケ岳直下

燧ケ岳と至仏山

会津駒ケ岳山頂

昼近くなのに,山頂は意外にも静かであった.山頂の標柱が上の部分しか出ていない.今までで一番雪が多い.最近降った雪のせいだろうか.

三岩岳(右のピーク):会津駒ケ岳から

駒の小屋には寄らずに西側下を巻いて滑り降りる.山頂下の開けた斜面は雪が緩んでいて,滑りやすい.1960m標高点付近から登山道なりに行くとオオシラビソの林内を滑るようになる.これが曲者である.木陰の雪はまだ締まっていてよく滑り,日が当っているところは強烈なブレーキ雪となっている.なんちゃってテレマークでは油断していると,思いっきり前につんのめってしまうのである.

駒の小屋

標高2020m付近

標高1800m付近より下はブナの林となり,ようやく滑りやすくなる.大量のつぼ足の跡を避けて,滑りやすいところを選びながら滑って行く.

標高1560m付近

標高1500m付近からは,雪がつながっているか慎重に確認しながら滑らなければならない.次第に枝が邪魔になる.横滑りも必要だ.もはや滑っているとはとても言えない.

標高1350m付近

それでも標高1300m付近までは何とかスキーで降りるが,どうやらその先の雪はつながっていないようだ.

標高1300m付近:ここでスキーを脱ぐ.

ここで板を脱ぎ,10mほど藪を漕いで夏道に出てスキーをザックに付ける.スキーを担いでの登りは辛いが,下りも十分辛い.急坂では,ザックの下に突き出たスキーのテールが段差に当たって怖い!登りは亀のようだが,下りはナマケモノのように随分スローモーなのである.おまけにテレマークブーツに親指が当って痛い!

ようやっと登山口の階段を降り,一旦林道を歩くとすぐに林道をショートカットする登山道に誘導される.水路を跨いで再び林道に出,最後の橋を渡るとすぐに林道も終わりだ.公衆トイレのところにホイールローダーが置いてあって,一般の車は林道にはまだ入れない.

桧枝岐の林道入口

辛い夏道と林道歩きを終え,車に戻るためにアルザ尾瀬前のバス停まで更に歩く.

それほど待つことなく,1334分発のバスに乗ることができ,小豆温泉のバス停の先,車を置いた場所で降ろしてもらうことができた.

久しぶりに歩いた三岩岳と会津駒ケ岳間は前回の記憶と違って,一部まだ冬の装いで大分印象が違った.しかも実に静かな山であった.天候にも恵まれ,なんとか歩き通すことができた.桧枝岐から乗ったバスの乗車時間によって,結構な移動距離を実感した.確かに充実感はある.達成感もある.しかし,スキーを担いで夏道や林道を歩くのは辛い.辛すぎる!まっぴらである.我々は天国を見たのではなく,地獄を見たのである!

我々突撃隊は年なのでスキーを担いでまで歩けないのだ!と思っていても年のせいで,それを忘れてまた突撃してしまうのが悲しい.

54日:国体コース登山口>三ツ岩小屋>三岩岳山頂>三ツ岩小屋】

55日:三ツ岩小屋>大戸沢岳>会津駒ケ岳】

55日:会津駒ケ岳>桧枝岐】