白鳥山
個人山行(なんちゃってテレマーク)
【日時】2013年2月10日(日)
【メンバー】M,T&Oza1(悠峰山の会山スキー突撃隊),ゲストN
【天候】 風雪
【山域】 頸城
【地形図】 親不知
【実録時間】 上路除雪終了地点(標高225m)07:55 − 鳥居杉付近(標高1110m) 11:30 − 山頂12:13 <昼の憩い> 〜13:44 − 上路除雪終了地点15:27
2月の連休は例年東北に突撃するところであるが,都合により本年は休止である.そこで,この連休は昨年行った山で素晴らしかった白鳥山に突撃である.
昨年,ビッグスワン(大白鳥)をホームスタジアムとする郷土のサッカーJ1チーム「アルビレックス新潟」が最終節で奇跡の残留を決めるという,ある意味優勝よりも大いに盛り上がることを成し遂げた.これも昨年(大)白鳥山に登ったおかげなのだ(と,勝手に思っている.).
天気予報は何日も前から雪だるまマークなのに高速道路を使って3時間もかけて遠征するのである.しかしながら,ここは再び奇跡を起こすため,アルビレックス新潟に成り替わり気合を入れて再突撃するのである.
早朝4時30分に家を出て,上路の除雪終了地点には,7時40分過ぎに到着する.連休の中日なのに,天気が悪いせいか先に駐車してあるのは1台しかない.それがなんと三重県ナンバーで,すでに杉林の中にトレースが付いている.
支度をしていると,単独の1名約一人がやってくる.結局彼とは山頂小屋までほぼ行動を供にすることになる.
【標高225mの取り付き】
昨年の白鳥山は3月の第1週で,天気が良くて放射冷却で冷えたせいか標高650m付近までクラストしていてシール登行に苦労したうえに,帰る頃にはまことに曲がりにくい悪雪に変化していたのであった.
今日は,さすがに厳冬期2月の半ばである.固く締まった雪の上に本日積もったと思われる雪が載っていて,去年のようなことはないだろう.
初めは先行者約2名のトレースなりに登っていくが,それは標高380m付近から左手の尾根に取り付かず,そのまま山姥の洞に向かう林道へと向かっている.
そのトレースとはそこで別れ,昨年登った尾根に取り付く.このあたりで我々の支度中に到着した富山は滑川市から来たという単独行者と一緒になる.マスクをしていて顔がよく見えなかったので,初めはなんとアメリカ人かと思ったが,良く聞いたら「ナ(ア)メリカワ(ン)よ.」とのお答えでした.(作り話です.)
昨年よりも雪が少なく藪が気になるが,登りやすいところを探しながら高度を稼ぐ.尾根に乗ると,次第に風が強くなる.
昨年ほどではないが,ところどころクラストしている.おそらく最近の陽気で溶けた雪が凍り,積もった雪もこの風で飛ばされてしまったのだろう.特に傾斜が強いところほどクラストしていて,しかも藪によってルートが限られているので一苦労だ.
【標高350mの小ピーク(帰りは東側を巻く.)】
【しき割りから白鳥山に続く栂海新道稜線:標高500m付近から】
標高750m付近で山姥の洞へ向かうと思われる林道に出合う.この先の斜面が一番手強い.それぞれが最も登りやすいところを探してなんとかクリアするが,ここはやっぱり最短距離で登るよりも急がば廻れである.
【標高700m付近でようやく藪から解放される.】
【開けた斜面が続く.:標高770m付近】
単独行者の付けてくれた極太トレースを辿り,高度を稼ぐ.昨年は標高900m付近で南西方向にトラバースし,1本西側の尾根に乗り換えて鳥居杉の脇を登ったが,今日の雪ではトラバースは苦労しそうなので標高1000m付近の傾斜が落ちるあたりから,西寄りに登ることにする.
【鳥居杉:標高1100m付近】
先行するN氏のルート取りが素晴らしく,尾根の乗り換えに大した苦労もなく鳥居杉脇にぴったりと出る.
高度が上がるにつれて徐々に視界が無くなって山頂を望むことはできないが,後は昨年と同じルートで栂海新道に出るだけだ.
この先,午後も視界はいっそう悪くなりそうなので要所に赤テープを付けながら登る.意外にもガスは掛かっているが山頂付近のほうが風は穏やかだ.
【山頂付近はガスの中:標高1150m付近】
【栂海新道稜線直下:3D】
栂海新道稜線へ合わさるすぐ手前にも伏兵が潜んでいた.雪が風で飛ばされたところが氷となっている.角度はいくらもないが,シールには強敵である.雪が付いているところをなんとか選びながら登る.
【栂海新道を山頂へ向かう隊員:標高約1215mから】
ようやく栂海新道の稜線に出る.そこでスキーアイゼンを付けるメンバーをしばし待つ.風はいくらもないが,さすがにオーバーグローブ1枚だけしかしていなかったので手先が冷えてくる.
ここまでくれば,山頂はあと僅か.10分も登ると山頂の白鳥小屋がガスの中に突然見えてくる.
【山頂の白鳥小屋(東面の窓は鍵が掛かっていて開かない.):標高約1287m】
視界が無いうえに寒いので,すぐに小屋の中に入ろうとするが,この小屋の廻りが本日一番の危険地帯であった.風で抉られた小屋の廻りの雪面が凍りついている.2階の窓を開けに行った隊員は漏れなく転倒している.それでも,いつの間にか単独行者が西側の梯子を使って2階に入り,東面にある雪がその廻りまで積もった鍵の掛かっていた窓を開けてくれたので,そこから簡単に中に入ることができた.感謝である.
小屋に入ると,思っていたよりも小屋の中が温かく感じる.天井が低く,床,壁,天井の全てが木でできているせいだろうか.それにしてもありがたい.早速いつものように昼の憩いになだれ込む.
【山頂直下の栂海新道を降る.】
昼の憩いを終え,外に出ると視程50mくらいだろうか,ガスがいっそう濃くなっている.
方角を定め,初めはゆっくりと滑る.雪面と空の境界がなく雪面の状態がわからない.
それでも,標高1160m付近で栂海新道から離れると次第に視界も利くようになり,滑りも楽しめるようになる.赤テープを回収しながら慎重にルートを確認しながら滑る.
【標高約1060m付近】
標高800mから上部は尾根が絡み合った複雑な地形で,晴れていればそれが素晴らしい景観を作っているだけでなく,滑っていても変化があって実に楽しいところである.
【標高1000m付近】
標高800m付近から下は登ってきた尾根を忠実に辿りながら滑り降りる.狭い尾根を塞ぐ倒木をスキーを履いたまま,公衆の面前には公開できないアクロバチックな格好でまたいで乗り越えたり,いくつかのピークは登り返しをしないようにトラバースでやり過ごす.
【こんな尾根を滑る.:標高660m付近】
降るにつれて藪もいやらしくなるが,昨年と違って雪がいいので滑りやすい.
【登りで取り付いた尾根:標高350m付近】
標高350m付近で取り付いた尾根から,山姥の洞に向かう登山道に出る.このあたりは林道になっているようで,後はその林道をショートカットしながら杉林の中を滑ると車が見えてくる.
登る前も登っている途中でも天気の状態から山頂までは無理で,途中のブナ林あたりまででも行ければというつもりで登っていたのに,思いのほか山頂付近の風雪は下ほど厳しくはなく,なんと山頂まで行くことができた.これもビックスワンの奇跡である(当初の目的と違うことに使ってしまったような気もするが…).
だが,しかし,どうやらこの山には藪とガリガリがセットであるようだ.やはり奇跡を起こすには,それなりの試練が待っているのである.