志津倉山(本峰)

会山行  山スキー突撃隊
【日時】2014126日(日)
【メンバー】MOZa1(悠峰山スキー突撃隊)
【天候】 小雪
【山域】 会津
【地形図】 博士山
【実録時間】 大岐(標高705m9:10 − カーブミラー(尾根取り付き)9:32    標高865m尾根 9:52    柳沢峠付近 <休憩> 9:5810:06    P1047m標高点手前 10:37    標高1120m付近 <休憩>  10:5911:06    P1185m標高点 11:23    山頂(本峰)1203m  11:4811:55    標高1170m鞍部 12:07 <昼の憩い> 13:38      P1185m標高点 13:4413:52    P1047m標高点先 14:09    標高865m尾根 14:39    カーブミラー(尾根取り付き)14:47    大岐15:00


暖かい.昨夜からの雨が,朝になっても雨である.昨年暮れの樽口峠よりもモチベーションが上がらない.

近在の山は,いまだに雪が足りない.予想気温からは,取り付きで標高700m以上ないと,雨の中を歩かなければならない.冬なのに,それだけは避けたい.

博士山の西隣にある志津倉山の取り付きである大岐の標高は705mである.この陽気でも雪であろう.

以前から現地を歩いてみて,国土地理院発行の125000地形図による志津倉山本峰を含めた山頂台地の三つのピークの位置に疑問があったが,GPSを入手してからというもの,本峰まで到達したことがない.これは,確認しなければならない.

本日の突撃先は,志津倉山である.

新潟から雨である.国道252号線に入っても雨である.琵琶首のトンネルを抜けても雨である.

ところが,境ノ沢を超えて昭和村に入ったとたん,雪となる.狙いどおり大岐には雪が降っている.晴れてもいないのに,なぜか喜ぶ突撃隊である.

雪は,春のようである.ざらめになりかけの締まった雪の上に,越後の雪のように水分を多く含んだ雪が少々載っている.本日はラッセルなしである.

元国道から取り付きの尾根にあるカーブミラーがすっきりと出ている.こ昨年よりも積雪は1m近く少ないようだ.しかし,積雪は十分である.籔は埋まっていて,雪も潜らず,キックターンをすることなく登ることができる.


尾根取り付きのカーブミラー

本日は,柳沢峠へ至る鞍部で1回目の休憩だ.この先の急斜面は,いつもよりもでこぼこがひどく,荒れた感じだ.どうやら,最近の陽気で,枝に積もっていた大量の雪が落ちて固まったようだ.さすがにこのあたりまで登ると,気温も下がり,雪も凍り始めているところがある.


標高1000m付近の巨大なシラカバ

柳沢峠上部の斜面は,急ではあるが広がりがある.登るにつれ,尾根が明瞭になると,徐々に傾斜が緩くなる.ブナに混じっていたカツラやミズナラも少なくなり,西側に向きを変える1047m標高点へと至る尾根の手前からは,大きな木は,ほとんどブナとなる.その標高1030m付近で尾根が西側に向きを変えるところも,良い目印となるブナがそびえている.

1047m標高点には登らず,帰りの登り返しを考えながら,頂上台地への最後の登りとなる鞍部を目指してトラバースする.

雪も何となく粉雪っぽくなってきた.小雪がずっと降っている.風が少しあり,ブナの幹や枝を白く飾り,ようやく冬の山の気分である.


頂上大地への最後の急登

頂上台地への最後の急登を終えたところで,2回目の休憩だ.山頂までにはもう,登りらしい登りはない.


急登を終えた標高1060m付近

標高1100m付近から上の尾根は大きく広がり,見渡す限りブナの林が広がっている.


標高1160m付近の志津倉姫

2年前に来た時に,枝が折れてしまっていた標高1160m付近に佇む優美なブナは,折れた枝の痕跡が月日の流れによって分からなくなっていた.再び美しい姿を取り戻したようだ.「志津倉姫」と勝手に名付けよう.

1185m標高点ピークへは,広がった大地の高みを目指すだけだ.地形図では1185mから先もそのまま北東に進み,次のピークに至ることになっている.



P1185m標高点

実際に歩いてみると,この1185m標高点ピークで,大きく北側に向きを変えて次のピークとの鞍部に下るのである.

ずっと地形図がおかしいと思っていたが,今回はGPSを持っている.確認すると,地形図のとおりである.GPSのトラックをみると,1185m標高点ピークに至る前に,いつの間にか自然と気付かずに何気なくそれとなく何となく大きく西寄りに歩いているのである.明瞭な尾根のない,広い台地をただ高いところを目指して歩くため,地形図には表現されない地形なりに,つい西方向に進んでしまうのだ.

1185m標高点ピークへは,高みを目指すのみであるので,コンパスで確認しながら歩くことはない.しかも,地形図では,そのまま北西に進んで行けそうであるが,実際には北側に回り込んで鞍部に向かうのである.

その結果,標高点で西向きから正しく北東に進行方向を変えているのに,つい勘違いをして地形図が違うのではないかと思うのである.

永年の疑問が晴れて,すっきりである.地形図は正しかった.さて正しい山頂に向かおう.



P1185m標高点から下った最初の鞍部

本峰の一つ東側のピークもてっぺんには行かず,北側を巻く.昼の憩いは次の鞍部にしようと思ったが,風があるため,通過してきた一つ手前の鞍部にすることとし,このピークの下にザックをデポして,本峰に向かう.



標高1200mピーク下

どこもかしこもブナである.博士山よりも,こちらのブナ林のほうが素晴らしいような気がする.山頂台地は,地形図でもわかるとおり,変化があって楽しめる.



標高1200m付近:3D


標高1203m志津倉山(本峰)山頂:3D

志津倉山本峰の標識がくくりつけられていたブナは,標識はもとより,その痕跡もすっかり消えていて自然な姿に戻っている.山頂の目印が無くなって,少し残念な気もするが,これも,また志津倉山らしくていいのだ.



以前,本峰の標識があったブナ

昼の憩いが待っている.山頂に長居はできない.早速シールを外し,ザックを回収して1185m標高点ピーク手前の鞍部に戻り,テントを設営して昼の憩いに突入する.


1160m鞍部で昼の憩い

テントの中はぬくぬくであるが,昼の憩いを終えても,相変わらず小雪が舞っている.天気予報どおり,それなりに気温が下がっているようだ.

一旦1185m標高点ピークへ登り返す.O隊員は,ここでシールを外す.

雪が深いと,この頂上台地は角度がないのでスキーは滑らず,登りのトレースを辿ることになるが,本日は少々もなか雪っぽいが,それなりに滑り,どこでも好きにルートを取ることができる.


頂上台地下の斜面

1047m標高点ピークへの頂上台地から下る斜面は,この雪でも十分楽しめる.ブナとブナの間をつないで滑る.あっという間に鞍部に至る.



P1047m下をトラバース

1047m標高点ピーク下をたいして登り返しすることなくトラバースする.

その標高点から大きく90度南東に向きを変える明瞭な尾根からは,視界があれば頂上台地を望むことができる.


P1047m標高点へ至る尾根

尾根が徐々に広がり,傾斜も増してくるに従い,表面だけが固まったもなか雪となるが,なんとか滑りやすいところを探して滑り下りる.

柳沢峠付近から,868m標高点までにはわずかな登り返しをクリアーすると,最後の灌木斜面である.ここも雪が深いと滑らないが,適当に腐った雪に本日積もった雪が載っている.本日は意外にもここの雪が滑りには一番楽しめた.

元国道に出たら,トレースを推進滑降だ.朝付けたトレースに新しい雪が場所によっては10cmくらい積もっているが,それなりに滑る.

カーブを大きく右に回り,大岐の集落が見えてくると推進滑降も終わりだ.


大岐

最近の陽気で,厳冬期の山はあきらめていたが,思いのほか楽しめた.とりあえず狙いどおり,この標高で雨に降られることはなかった.

それよりも,何より,あらためて志津倉山の素晴らしさに気付かされた.東北らしい穏やかな山容に木肌の白い日本のブナの林が広がっている.わずか1200m程度の標高に,世界でもまれな大量の降雪があり,他に類のない景色を作っている.世界に誇る景観である(きっと).世間に知れ渡り,世界遺産に登録されないよう,密かに見守ろう.

幸いにもこの志津倉山本峰には夏道がない.登山道のある1234m三角点に登ってもこの山の本当の素晴らしさはわからない.

雪があるときにだけ,労することなく本峰に登ることができ,この景観を堪能できる.しかも,スキーで滑って帰ることができる.人生のささやかな幸せを感じる中高年約1名の今日この頃である.