吾妻小富士

個人山行 sue

【日時】 2014525

【天候】 曇りのち晴れ

【山域】 吾妻連峰

【地形図】 -

【時間記録】 四季の里5:00 −高湯06:50 −不動沢07:50 −浄土平8:55 −吾妻小富士1 −浄土平9:25 −スカイライン最高点9:45 −湖見峠1040 −土湯峠11:20 −土湯13:05 四季の里13:40


吾妻小富士には登っていますが、これは登山記録ではありません。当会の山行報告としてふさわしくないとのご指摘は十分承知の上で、寛大なる会の皆様からはきっとお許しいただけるものとの思いで報告します。長いのでつまらないと思ったらそこでサヨナラしてください。

 

ちょうど1年前の2013526日、『チャレンジ磐梯吾妻スカイライン』に参加した。これは、福島市郊外の「四季の里」をスタートし、高湯温泉から磐梯吾妻スカイラインを経て吾妻小富士に登り、来た道を戻る延長60q、標高差1570m、制限時間9時間のウルトラマラソンだ。

主催者側は、「順位を競うレースではなく、のんびり自然を楽しむ大会」とは言うものの、磐梯吾妻スカイラインに行ったことのある人ならお分かりと思うが、けっこうハードなコースなので、本当にのんびりしていたら完走できない。

練習量の少なさと、これまで経験したことのない大きな標高差のレースに、完走できるのか不安な気持ちをいっぱい抱えたまま、朝5時に200人の参加者とともにスタートした。

コースは最初の約6qは田園地帯の平坦路だが、高湯街道に入ると上り坂となり、しだいに急登の連続となる。高湯を過ぎ、無料となったスカイラインに入ると勾配は少し緩くなる。つづら折れの道をどんどん高度をかせいで行くと、森林地帯から山岳地帯へと移り、火山地形特有の荒涼とした風景の中に入って行く。

不安な気持ちでスタートしたものの、走り続けるうち、けっこう快走している自分がそこにいた。

延々と続く登り坂を快調に駆け上がり、吾妻小富士の鉢を1周して浄土平に戻ると、まだ9時を過ぎたばかりだった。スタートしてから4時間と少々。この後はほとんど下りになるので、スタート前の心配はどこへやら、楽々と制限時間内に完走できるペースできている。

しかし、このとき私の耳元では悪魔が甘〜い言葉をささやいていたのだった。

「君はすごい。実に素晴らしいランナーだ。その調子だよ。」(好事魔多し・・・)

浄土平から登ってきた急な坂道を下り始める。喘ぎながら登ってくる後続のランナーを横目に、優越感を感じながら気持ちよく駆け下りて行く。

「どうだ。オレは速いだろう!」(好事魔多し・・・)

長く続く急な下り坂は、膝や腰への負担が大きい。足のつめが圧迫されて、後日黒く変色してぬけることになる。それでもますます快走は続く。高湯を過ぎたところで応援(観光?)に来ている家族と会う。ゴールまであと15q。力強く右手のこぶしをあげて宣言する。

1240分だ。ゴールで待ってろ!」(好事魔多し・・・)

ゴール手前8q地点でスタッフが順位を数えてランナーに教えている。『69』自分の現在の順位だ。前から約1/3の位置には満足だが、調子は悪くない。

「まだまだ上位を狙える!」(好事魔多し・・・)

昼になり気温も上がってきているが、あともう少しだと思えば、力が湧いてくる。そして、ゴール手前2qの最後の給水所。冷たい水を口に含み、信号が変わった交差点を確かな足取りで左折する。長かった60qの最後の2q、気分は最高。

「ゴール目指してラストランだ!」(好事魔多しーーー・・・

(左折、左折、・・・、地獄への左折・・・)

何かのイベントがあるのか、人混みの中を走っている。走ってしばらくして、前にも後ろにもランナーの姿が見えないことに気付く。いつしか人混みもなくなって自分一人しかいない。しかし、60qのコースに200人程度の少人数だから、レースの最終盤ともなれば、ランナーがバラけてしまうのも当然と、あまり気にも留めずにいた。

けれども、いっこうにゴールらしきものが見えてこない。すでに2q以上は走っているはずだ。コースを外れてしまったようだと気づいたが、今さら戻る気にもなれず、ゴールの近くにイチゴ栽培のハウスがあったはずだから、それを見つければゴールにたどり着けるに違いないと、そのまま走り続ける。

しかし、イチゴのハウスはいっこうに見つからないまま、福島市郊外の田園地帯のど真ん中に深く深く迷い込んでいった。ゴールはおろか西も東も分からず、全く土地勘のない中で途方に暮れてしまった。ゴール目前のハイな気分から一転地獄の底に真っ逆さまになってしまった。

とにかくゴールの方へ行かなければと思い、道を聞くため農家の戸をたたくが留守だ。次の農家に行くと家人が出てきた。ゴールの四季の里への道を聞くと少し困ったような顔をして、奥から折り込み広告を持ってきて裏に地図を描いてくれた。言葉では説明できないところに来てしまったようだ。気ばかりあせって説明もよく耳に入らなかったが、まずは大きな道まで戻れとのことだったので、そこでまた誰かに道を聞くことにして礼を言って農家を後にする。

しかし、大きな道まで戻ったものの誰も歩いていない。依然として福島市郊外の田園地帯の真ん中だ。道を聞ける人がいないので、何の根拠もないのだが、イチゴハウスがありそうな方をめざし、とにかく走り続ける。気持ちは焦るばかりだ。

どれくらい走ったころだろうか、遠くにランナーらしき人影が見える。

「あの人も道を間違えて戻るところなんだ。このコースわかりにくいんだよな」

などと勝手に思い込みながら、自分だけではないと少しホッとした気持ちになった。ところが、その後方にもランナーが見えるではないか。

「まだほかにも間違えた人がいるのか・・・?ん?んんん???」

「じぇじぇじぇーっ!!!(去年は流行っていた)。ここはさっき走ったところではないか!!」

いつのまにか正規のルートに戻っていた。それもラスト2qの交差点の手前2.5q。福島市郊外の田園地帯を1時間もさまよったあげく、逆戻りしてしまったのだ。

呆然として全身から力が抜けていくのがはっきりとわかり、その場にしゃがみこんでしまった。後続者がどんどん自分を追い越していくがもう走れない。

すっかり沈み込んでしまったが、制限時刻の午後2時までもう時間がない。何とかゴールまでとフラフラ立ち上がる。

初夏の太陽が真上からジリジリと照り付ける中、走っては歩き、歩いては走りを繰り返し再び最後の給水所にたどり着く。

「ここの給水所、2度目なんだけど」

と言うと、スタッフのおじさんは、

「ああ、呼び止めようとしたけど、行ってしまって・・」

「は〜ぁ・・」

ボランティアのおじさんに文句を言うわけにはいかない。コースを間違えた自分が悪い。

しかし、今度こそあと2qだ。制限時間内の完走をめざし疲れ果てた心身にムチを入れる。そして、さがし続けてきたイチゴハウスが見えた。全然違うところを走っていたのだ。イチゴハウスを右に曲がり最後の坂を残りの力を振り絞って走っていくと、心配そうな顔をした家族がゴール脇で待っていた。

ゴール時刻は、135426秒。制限タイムまであと534秒だった。

それまで、60レース以上走っているが、コースを間違えたのはもちろん初めてのことだった。「調子のいい時は気をつけろ」という教訓を残して、磐梯吾妻スカイラインへのチャレンジは終わった。

こんな笑える話が1年前にありました。

「今度こそまともに走りたい」そんな一心で再びチャレンジしました。今年のコースは吾妻小富士を登った後、来た道を戻るのではなく、土湯峠を経由して四季の里に戻る一周コースで、距離は66.3q、制限時間は10時間です。今年は昨年のような面白い話はなく普通にゴールしました。

以下は今年のチャレンジの概況です。


スタートはこんな感じ。


スタート後しばらくは田園地帯。


15q地点 高湯温泉


不動沢の橋も走って通過する


不動沢を過ぎると吾妻小富士が見えてくる


火山性ガスの臭う中、浄土平を目指す



吾妻小富士1707mの火口を1周する。体が飛ばされそうになるほど風が強い


吾妻小富士を1周して浄土平に戻ると30.8km、ここから土湯方向に下る


浄土平から約2qでスカイラインの最高地点1622m


湖見峠40q地点 まだまだ延々と道は続く


土湯温泉 ゴールまであと4.5q

ゴールはこんな感じ。こじんまりした大会だ。

1340分着(正式タイムは後日郵送される)