横岳(南八甲田

個人山行(なんちゃってテレマーク,山スキー)

【日時】2017326日(日)

【メンバー】M,特別顧問Yg(以上悠峰山の会ブナリンスキー突撃隊),ゲストU

【天候】 晴れ/曇り

【山域】 南八甲田

【地形図】 酸ヶ湯

【実録時間】城ヶ倉大橋西詰駐車場(標高720m09:18 −  逆川岳湿原11:14    山頂1355m <昼の憩い> 12:2113:08   取付き14:03


定年を迎えるにあたり,初めて参加した同窓会で,なんと青森市在住の同業者がいることを知る.

青森といえば,八甲田山である.

八甲田山といえば白い粉である.

八甲田での再会を誓う.

 

いつもは厳寒期の2月に遠征していたが,送別会や各種行事の絡みから,突撃は3月も末になってしまった.

粉は期待できないが,酸ヶ湯の湯治部の部屋が確保できたので良しとしよう.

早速,その同級生(U野)を誘うと要職にもかかわらず,休みを取って付き合ってくれるという.

 

酸ヶ湯から城ヶ倉大橋を渡った先の駐車場が取付きだ.

既に数台の車が停めてあり,青年約一名が支度をしている.

 

スキーを手に持って雪の壁を登るが,ここが本コースで最も厳しい.

靴が滑り,顔面を雪に思いっきりぶつける.情けない.


【取り付き】

【ここで板を履く】

 

息も絶え絶え,その雪の壁を登り切ったところで板を履く.

同級生は昨日のガイドツアーに引き続きのシール歩きであるが,本格的な登りは今日が初めてだ.

【まずはトラバース気味に】

 

前日や本日に付けられたトレースなりに特別顧問Ygが先頭を切って歩く.

トレースはなぜか尾根なりに歩かず,トラバース気味につけられている.

U野も問題なく上手に歩く.

 

少し歩くと,トラバース気味に付けられた理由が分かる.

尾根なりに歩くとその先で,一旦わずかに下るのだ.

そのわずかな無駄も避けるようにうまくトレースは付けられている.

これはお任せで山頂まで行けそうだ.

【標高980m付近】

 

登り初めはブナ林を歩くが標高950mくらいからオオシラビソが目立つようになる.

雪は意外に粉っぽい.

日は照っているが,樹林帯は帰りも期待できそうだ.

 

【オオシラビソの間を歩く】

 

標高で1050m付近から次第に木の間隔が広くなり,横岳山頂方向の樹氷が見えるようになる.

振り向くと八甲田ロープウェー山頂駅が見える.

空は次第に雲っぽくなってくる.

【山頂方向】

 

逆川岳の付近は湿原になっているようで,開けている.

逆川岳の三角点はGPSでもなければわからないだろう.

トレースは山頂によらず,逆川岳三角点の西側から山頂に向かっている.

【写真左が逆川岳】

 

振り向くと昨日歩いた八甲田山がしっかりと見える.

昨日歩いた大岳と井戸岳の鞍部がよくわかる.

【大岳:3D

 

標高1200m付近から次第に尾根らしくなり,東側にはそれなりの雪庇ができている.

南八甲田の主峰,櫛ケ峯も姿を現す.

【奥は駒ヶ峯】

 

途中下山する数人とスライドするが,横岳の南斜面を3回登り返してこれから帰るという元気な二人パーティーもいる.その元気をわしらにくれ!

【山頂直下】

 

山頂直下はシュカブラっぽくなっている.

空はすっかり雲が広がってしまったが,風はそれほどない.

一息で山頂だ.

【横岳山頂標識】

 

一番高いところに山頂標識がある.

標高1339mとあるが,これは三角点の標高で,ここは1350m以上ある.

【奥に岩木山】

 

岩木山も見えるが,残念ながら山頂は雲の中だ.

反対側には南八甲田の山並みが広がっている.

西には白神山地も見えるが,いずれもなじみのない山々が広がっている.

【駒ヶ峯と奥に猿倉岳】

 

名残惜しいが横岳を後にして,下山だ.

逆川岳付近までは,日に当たった雪で少し重いがそれなりに滑る.

【右奥が横岳】

【逆川岳上部】

 

逆川岳の湿原まで来ると雪が一気に良くなる.

どこでも滑り放題であるが,オオシラビソの周りにできる穴だけには注意しよう.

【快適な斜面が続く】

 

樹林帯に入ると雪はさらに粉っぽくなり,頭の中は白い粉人となる.

斜度はいくらもないが,今日の雪は十分滑る.実に快適である.

【標高880m付近】

 

駐車場に近づくとさすがに雪は少しだけ重くなる.

重くなるが,滑りに差し支えはない.

【最後の斜面】

 

登りで苦労した雪の壁も帰りはスキーを履いたまま横滑りで落ちれば,本日終了である.

 

3月の八甲田は初めてであったが,今までで一番楽しめた.雪は意外にも連日新雪があり,粉4連発である.当初は秋田への移動日に森吉山に行く予定であったが,粉の誘惑には勝てず,最終日も八甲田で「白い粉人」となった.

そしてこの時期は,厳寒期の2月に比較して圧倒的に人が少ない.雪さえ良ければ新潟夜発のフェリーが運航しているこの時期がいいようだ.

 

かねてより行ってみたかった南八甲田の一角に特別顧問Ygに加えて山スキーは初めての同級生と一緒に立つことができた.加えて3月末なのに粉までも味わえるという望外の喜びを噛みしめる定年まであと数日のブナリン突撃隊員約である.

 

 

------- Up ------- Dn


【おまけ@:八甲田酸ヶ湯ガイドツアー】

今回の遠征では3日間酸ヶ湯ガイドツアーに参加した.

一日目はロープウェー山頂駅で合流し,シールで大岳と井戸岳の鞍部にある大岳避難小屋まで登り,そこで昼食とし,井戸岳,赤倉岳の西側斜面から箒場岱へと滑り降りる1日コースである.

毛無岱の上部でシールを付け,大岳避難小屋まで1時間半くらいかけて登る.ルート取りが分からなかったので,一応シールを付けたが,ガイドは歩きやすいように緩やかにトレースを切るので,シールなしでも登れそうだ.

鞍部に近づくと,樹氷が発達している.

避難小屋にも盛大に樹氷が付いていて,見る向きによってはちょっと気付かないくらいだ.

そこからは適当な距離で滑ったり,横に移動したりしながら飽きさせない巧みなルート取りでバスの待つ道路まで滑り降りる.

【大岳避難小屋への登り】

【鞍部を進む】

【大岳避難小屋】

【横移動】

S隊長(右)と抜群にうまい粉人達】

二日目は横岳へ自力登山のためガイドツアーはパスする.

三日目は午前が前岳の北側を滑る銅像コースで,沢床まで標高差で150mくらいを滑り降りる.わずかに登って前岳北斜面に出て粉を美味しくいただく.

午後はモッコ沢コースとなる.

山頂強風のため,ロープウェーが昼過ぎに運休となり,その最終便で山頂駅に上がる.

悪天の時はたいていモッコ沢コースであるが,他のトレースと被らないように美味しい斜面を選んでいく.月曜なのに新雪が載っていて前日のトレースも気にならない.

最後はスキー場のフォレストコースと合流し,ロープウェー駅でガイド終了だ.

【前岳鞍部の南東側斜面を登る】

四日目は秋田市に移動するため,午前の半日コースに参加する.

田茂萢からわずかに登り,1232m標高点鞍部に出る大鳴沢コースだ.

このコースは歩きも変化があり,滑りになっても林間滑降が多く好きなコースだ.

この日は道路近くの緩斜面になってもそれなりの粉で,滑りも歩きも十分に楽しめた.

1232m標高点南側を移動する】

3月なのに粉が舞います】

【本日の先頭ガイドT川氏】

 

------- 25日:箒場岱コース

------- 27AM:銅像コース

------- 27PM:モッコ沢コース

------- 28日:大鳴沢コース

 

【おまけA雪山装備】

我々が八甲田で白い粉人達になっているときに栃木県で雪山講習会中に雪崩に巻き込まれ7人の生徒と先生1人が亡くなった.合掌である.

報道によれば,雪山講習というのにスコップは各班に一つしかなく,ビーコン(雪崩トランシーバー)は持っていなかったらしい.

これも報道によれば死因は圧死らしいが,各自が雪山装備(スコップ,ビーコン,ゾンデ棒)を持っていれば助けられた命があったのではないだろうか.確かにそれらを持っていても使いこなすことは難しい.簡単に埋没者を探し出せるとは思えない.だが報道が事実とすれば初めからその努力を放棄していたことが残念だ.

ラッセルをする体力やスキルも大事であるが,現代には役立つ道具がある.まして,雪山講習会である.ビーコンを使った埋没者捜索訓練は必須であろう.埋没者を救うことができるのはその場にいる人なのである.各自にスコップやビーコンを持たされずに雪山講習会に連れていかれ,亡くなった前途ある生徒に改めて合掌である.

我々のように誰に頼まれたわけでもなく自分で好きに雪山に入って雪崩に逢うのは仕方がない.納得!自業自得である.それでも,家族や捜索をすることとなる関係者のことを考えればなるべく雪崩に遭遇しないことや,万一そうなったときには探してもらったり埋没者を助けられるようにしたりできるだけの努力はしたい.

雪山に入る以上スコップ,ビーコン,ゾンデ棒等を携帯しよう.最低でもスコップは持っていこう.スコップは決して宴会場を作るためだけにあるのではない.埋没者助け出すためや風を避けるための雪を掘るのに必要なのだ.誰かが持っていてもその人が雪に埋まったり,はぐれて一人になったりした時のことを想像してみよう.夏の山とは違うのである.

第一それを携帯しないことは,埋没者を助けることを放棄しているのである.雪山は連れて行ってもらうものではない.皆で協力して登るのである.

自分のため,家族のため,仲間のため,そして危険を冒して捜索してくれる関係者のためにも雪山に入るときの装備を各自携帯しよう.