巻機山~下津川山

 

個人山行  oza1

【日時】 201753日~5

【メンバー】 4人

【天候】 晴れ時々曇り (3日間共)

【山域】 上越国境

【コース】 清水桜坂駐車場~巻機山~下津川山~ネコブ山~十字峡~三国川ダム

【地形図 2.5万】 巻機山、奥利根湖、兎岳

コースタイム】 
5/3
桜坂駐車場
7405合目910~ニセ巻機12:30 ~巻機山山頂13:45~牛ケ岳14:00~トトンボの頭15:45~トトンボの頭下の稜線1855m地点16:00(テント泊)

5/4
1855m
地点テント場発7:10~永松岳8:101440m稜線最低鞍部 9:45~三ツ石山 11:05~三番手山13:001325~小沢岳15:00-15:15~下津川山 16:25-16:35~稜線1780m地点17:30(テント泊)

<5/5>
稜線1780m地点テント場発6:20~ネコブ山()8:00-8:15~桑ノ木山9:20-9:40~十字峡導水管下12:00-12:15~三国川ダム13:20


平成165月に初めてネコブ山に登った時に、目の前に広がる上越国境の稜線に圧倒された。ネコブから稜線繋がりの下津川山は越後百山などで名前は知っていたが、その隣に端正な姿と異様な紋様のある山が目に留まった。その存在感と懐の深さは下津川山を凌ぐが、その時は全く名前を知らなかった。家に帰って地図を調べ、その名前を見て衝撃が走る。その山の名は「小沢岳」。え、俺?、どひゃー!、マイナー名山よりマイナー名山だ。

以来、一般登山者の自分としては究極の目標と言っても過言ではなかった。

そして時は流れ、ついにその山を登る日がやってきたのである。リーダーOZ、リーダーを差し置き実質リーダーAS氏、スーパー料理人のOG、最強のアイドルWっきーさんの参加を得て、悠峰パーティ「FanTa・S・ふぉ~!」が結成され、23日の予定で、この未踏の山に挑むのでした。(※実質リーダーAS氏は10年前に登頂済みであった。)

1台の車を下山口となる三国川ダムに駐車し、もう1台で巻機山の桜坂駐車場に行き、登山を開始する。駐車場は除雪してあるが、歩き出せばいきなり雪の上である。まだまだかなりの雪の量だ。

 3合目あたりから井戸の壁が立ちはだかる。重荷と急坂にあえぎながら駐車場から1時間半程で5合目に到着、ここからは米子沢や谷川の大源太山などの眺めが良い。



<五合目より大源太山方面>


さらにしばらく行くと今度はニセ巻機山への辛い急坂が続く。早くもエネルギー残量が0に近づいてきた。縦走前にゲームオーバーとなりそうだ。他の3人との差は開くばかりで、かなり遅れてニセ巻機山に到着。とりあえずの昼食とする。



<ニセ巻機山>

その後も牛歩の歩みで巻機山を通過、さらに進んでやっと縦走路の分岐となる牛ケ岳だ。そしてそこからの縦走路を見て唖然とした。


<牛ケ岳より下津川山へ向かう稜線>

なんとそこに見える尾根には雪がなく、茶色の稜線が続いていた。「ヤブだ~!」と誰かが叫ぶ。はたして行けるのかと葛藤しながらも足は躊躇なく進んでいる。笹藪なので鞍部までの下りは案外楽だが、登りになるとスピードが一気に落ちる。笹ならまだしも、石楠花などの木につかまると厄介だ。



<トトンボの頭手前のヤブ漕ぎ>

できるだけ木を避けトトンボの頭と言われるピークを超え、少し下ると実質リーダーのASさんから「オーイ!いいテンバがあったぞ」と声がかかり、1日目のテントを張った。午後4時頃だが、まだ日は高く、外で、ビールを飲んだり、雪を溶かして炊事用の水造りなどをしてのんびり過ごす。しかし、又、重大事案が発生。明日行く先を見ると、稜線の永松岳の手前に発達した雪庇が崩れ、ナイフリッジのように見える。AS実質リーダーは行けない確率85%と断言。「人によってどうしても登れない山というのがある。小沢岳は遠い山だった。明日は引き帰すことになる」と言い出した。


<永松岳手前の雪庇が崩壊している>

「え~い!思い慕う事、幾年月、なんという無念。無念じゃ~」とOZは心の中で叫んだが、意外に他の人はけろっとした様子だった。リーダーが悔しがるのを尻目に、その後テント内での食事は食担のWさんの豪華な食材のおかげで満足、満腹となりました。

次の朝、テントを撤収し、雪庇崩壊地点に向かうと、予想に反し、崩れていた反対側の斜面の各度が緩く、意外と楽に通過できた。神様は15%の方を選んでくれたのだ。

藪を漕いで永松岳のピークを超えると今度は急斜面の雪面のナイフリッジだ。自分的にはここが一番怖かった。両側が切れ落ちてる上、高さや、距離もある。滑落の恐怖に耐え、ピッケルを差し込みながら一歩一歩慎重に進む。ジェットコースターの一番高いところから今まさに落ちていく感覚で、精神的に本当に疲弊した場所だった。その後も大きなクラックや今にも崩れそうな雪庇の通過など気が抜けない。ようやく下りきったところで一息入れる。

<永松岳の下り>

行く先に目をやると今度は今回の稜線の最低鞍部まで深い笹薮だ。アイゼンを外し笹薮を下る。ところによって人の背丈程もあるので、逆方向に縦走するのはさぞ難儀だと思わせる。

標高1450mの最低鞍部を過ぎると三ツ石山の登りだ。途中でアイゼンを再びつける。三ツ石山まで来るとようやく、巻機山が遠ざかり、小沢岳、下津川山が近づいたような気がした。

<三ツ石山への登り>

<三ツ石山より下津川山、小沢岳方面>

再び大きく下る。何度登り下りを繰り返すのだろう。縦走は平坦な道を行くわけではない。折角登った標高を一気に下り、又登り返す。後半になると疲れて思考も麻痺、登りでも下りでも足を前に出すだけでどうにでもなれとの気分だ。

ふと空を見上げると色鮮かな彩雲が発生していた。ふわふわした気持ちとなり天空の中を歩いている気分でいたが、三番手山に登りついてようやく正気に戻る。

<彩雲>

反対側から上がってきた2人組が休んでおり、我々も休憩とした。今回縦走路で初めて出合った人である。昨日は桑ノ木山で泊まったという。情報交換をし、互いの健闘を祈って別れた。時間は午後1時半になろうとしている。最低でも下津川山は越えたいとの中で出発する。ピークを一つ越えるといよいよ小沢岳への登りとなる。



<小沢岳への登り>



<もうすぐ山頂 バックは越えて来た稜線>

いよいよ念願が叶う時がやってくる。長い雪の斜面を一歩一歩、足元を踏みしめながら登り、午後36分、ついに小沢岳に登頂した。山頂には三角点もなにもない。ただ低い笹薮があるだけ。手つかずのやさしい自然がそこにあった。これが求めていた山頂なのか。感無量です。

 

<小沢岳から下津川山>

しばらく感慨に耽り、下津川山に向かう。大きな雪面を自由に下る。今日一番の快適な下りだ。下りきった鞍部には通ったばかりの熊の足跡があった。少しでも時間がずれて遭遇しなかったことは幸運だ。早々に立ち去ろう。ここは彼らの居場所で我々がよそ者なのだ。

<熊の足跡>

下津川山へは痩せた藪の稜線を登らなければならない。笹ではなく木の藪で、それでいて痩せており、中々に厳しい稜線だ。木をかき分け、時には摑まり登って行き、午後4時半頃、下津川山の山頂に着いた。山頂には三角点があり、初めて人工物を確認した。



<下津川山 三角点>



<下津川山より小沢岳>

なんとか今日のうちにここまで着いた。あとは下りながら、テント場を探すだけだ。ネコブ山へ向かう稜線にテントが1張あり、我々よりも年配の夫婦がおられた。3泊目とのことだが、この稜線を縦走しているとは恐れ入りました。よほどの山ヤ夫婦なのでしょう。

<テント場を探して下る。前方はネコブ山>

我々は少し先まで下ってテンを張った。時間も遅かったことから、寒くて、風も強い。とても外にいられず。テントの中で水造りを始める。全員、今日一日かなり疲れた為か、あまり動く気がしない。ゆっくりと夕食の支度を始める。食材は昨日と同じく豊富だったので、食べながら、だらだらと飲んでいたので就寝時間は夜11時を回ってしまった

  

   <W・O・A>                            <W・O・O>

翌朝5時起床。朝食を食べ、早めにテントを撤収。越後三山をバックに記念写真を撮って出発する。ここからも稜線は細く、藪が多い。ピークの乗り越しも大変だ。大きく下ってからネコブ山までの登り返しに1時間40分を費やす。ネコブ山の(耳)で休憩。良く歩いたものだと稜線を見渡す。それにしても絶景だ。山の険しさ、スケールとも日本の山岳景観の中でもトップクラスではないか。雪はそれらの山をさらに立派に見せる。


<ネコブ山から下津川山と小沢岳>

景色を堪能した後はいよいよ下山開始。もう目立った登りはない。ほぼ下り一辺倒だ。ネコブ山を軽快に下り、桑ノ木山で一息いれる。



<桑ノ木山からネコブ山>

<桑ノ木山から中ノ岳>

いよいよ銅倉尾根の急降下だが、これが辛かった。最後まで楽をさせてくれないルートである。最後の導水管の階段を下りた時には4人全員、しゃくなげ湖畔の芝生の上でしばらく横になって動けないほどだった。久しぶりにハードな山行をして体は疲れ切ったが、心は満足だ。十字峡には何パーティかおり、聞くと、尾瀬から縦走してきた人達が多かった。ダムまで一時間ほど舗装道路を歩き山行を終了する。一緒に歩いてくれたメンバーの皆様どうもお疲れ様でした。そしてありがとうございました。

 

 

<追記>

縦走に対応する為、三国川ダムに置いた車の持ち主が、あろうことか鍵を桜坂駐車場に置いた車の中に忘れてきたことが縦走中に判明しました。三国川ダムであつかましいお願いをしたにもかかわらず、快く下の集落まで送って頂いた、三条の秀峰山岳会の方々に厚くお礼申し上げます。ほんとうに助かりました。                    -- 悠峰山の会 --