剱岳横断(馬場島~剱岳~欅平)


個人山行 sue

【日  時】 2017924-26
【メンバー】 solo
【天  気】 快晴
【山  域】 北アルプス北部  



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馬場島0950 - 早月(伝蔵)小屋14:05


 長年温めてきた計画をやっと実現するときがきた。

黒部駅前の駐車場に車を置き、旧JRと富山地鉄を乗り継いで上市駅で降りる。タクシーをさがそうとしていたら背後から声がかかる。「剱岳ですか?」。助かった。タクシーを相乗りする人がいた。馬場島までのタクシー代約9000円が半分で済んだ。

馬場島の駐車場はキャンプシーズンでもないのにほぼ満車。そんなに人気のあるコースだったろうかと不思議に思ったが理由は後でわかった。

早月尾根はいきなり急登が続き久しぶりのお泊り山行の身にはつらい。標高1000mで視界が開けて劔の稜線が見えた。それをカメラに収めたときおかしなシャッター音がして、それ以降シャッターが切れなくなった。長年酷使してきたカメラがとうとう壊れてしまった。まだ歩き始めたばかりなのに、この先ずっと文字通りのお荷物になってしまった。


《一眼レフ最後の写真 この後はスマホ撮影》


晴天だったが昼頃から雲に覆われてきた。早月尾根は次から次と多くの登山者が下りてくる。前週の3連休は台風で誰も山に登れなかったので今週末に集中したものらしい。それで馬場島の駐車場がいっぱいになっていたのだ。へとへとになって小屋に着いた時には登山者もほとんど帰った後でテント場は自分も含め5張だけだった。前日は便所の前までテントが張られたそうだ。

日没近くなって雲が切れて夕日がさし、小窓尾根が真っ赤に燃えた。壊れたカメラが恨めしかった。


《一瞬のドラマ》


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早月小屋0510 - 剱岳7:558:10 - 三ノ窓0940 - 小窓1105 - 池ノ平12:0512:20 - 仙人温泉1430 - 仙人ダム16:30 - 阿曽原17:30

 

  2日目は長丁場なので早めに出発するが、小屋泊の人はすでにかなり先を歩いている。標高2600 mを過ぎるとほとんど岩だらけの尾根になる。天気はいいが北向き斜面なのでなかなか日があたらない。


〈早月尾根最上部 別山尾根とは違い陰気な岩場〉


頂上に着くと剣沢から大勢の登山者が登って来ていた。無風快晴なのでのんびりしたいところだが先を急がなければならない。『この先キケン一般登山者は入らないでください』の看板の前を背中に視線を感じながら北方稜線に踏み入る。


《山頂から長次郎の頭と八ッ峰上部 「北方稜線」で検索すると必ず出てくる写真》


山頂から池ノ谷乗越までのルートは、ルートファインディングを誤らなければ特に問題となる所はないが、自信がなければガスっている時は行かない方がいいかも。

浮石で埋まった池ノ谷ガリーを下ると三ノ窓だ。ここで池ノ平を今朝出発したという2名パーティー2組に会った。ここまで3時間半ということだった。自分の中では、阿曽原まで行くには池ノ平発13時をタイムリミットにしていたが、余裕で着けそうなので先のことを考え少しペースを落とす。三ノ窓からは「発射台」と言われている小窓ノ王基部のバンドがルートになっているのだが、16年前当時高校生だった息子と来た時にはこれがわからず、この先の北方稜線を断念して三ノ窓雪渓を降りている(悠峰4号参照)。一見登れそうにない「発射台」であるが取付いてみると簡単に小窓ノ王の肩まで行ける。当時はネットの情報も今よりずっと少なかった。


《池ノ谷ガリー(中央)を振り返る。写真で見るほど急ではない》 


さて、三ノ窓から先は自分には未踏の領域であり少し構えていたのであるが、小窓ノ王の肩から見る小窓方面は今までと違い穏やかな風景に見えた。踏み跡も一部を除いて明瞭であり、危険とされる急な雪渓もすでに消えていた。歩きやすくはないが問題なく小窓に到達できた。池ノ平山経由で池ノ平まで行くのも面白そうだが、時間も余力もないので小窓雪渓から鉱山道を経て池ノ平に行く。小窓から池の平までは思いのほか遠かった。


《小窓雪渓 これが氷河と言われても・・》

池ノ平小屋の前で管理人が椅子を出してくれたので、しばらく裏劔の眺めを堪能してから先を急ぐ。池ノ平、仙人峠、仙人池と少しずつ角度を変えて裏剣の景観を楽しめるが、残念ながら秋は朝しか八ッ峰に日があたらない。池ノ平も仙人池も紅葉には少し早かった。




《仙人池と裏剣 当会のHPにも使われている風景》


仙人池から仙人温泉までの登山道は仙人谷沿いにつけられている。ここまで来るともう黒部の領域だ。今年は仙人温泉小屋が早々と閉めてしまったので、もう阿曽原まで行くしかない。阿曽原まで行って大きな露天風呂に入りたい。思いきりビールを飲みたい。

仙人温泉からは私の古い地図には載っていない雲切新道を行く。あまり評判の良くない道のようであるが問題なく仙人ダムまで導いてくれる。しかし、関電宿舎のある人見平から水平歩道まで上がる急登が非常につらかった。歩いたことのある道だがこんなにきつかったという記憶はない。阿曽原に近づくと今度は水平歩道からの長い下り。疲れ果てたが何とか明るいうちに阿曽原に着くことができた。

ここにはかけ流しの温泉がある。炊事場と水洗便所の整ったキャンプサイトもある。日本有数の電源地帯なのでうるさい発電機の音もない。そして何よりもここにはビールの自販機様がいらっしゃるのだ。700円をお納めすれば500㎖ビールが欲しい時にいつでもいただけるのだ。温泉には到着後と夜明け前の2回入った。満天の星空の下、極楽気分であった。今年はまだ下ノ廊下が開通していないので、阿曽原小屋の利用客は少なく風呂もガラガラだった。


《仙人温泉の源泉 阿曽原温泉は有名な高熱隧道から引湯している》


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阿曽原 0630 – 欅平10:40

 

最終日は欅平までなので気が楽だ。遅く出発してもよかったが、標高も低く暑くなりそうなので6時半に出発する。水平歩道も1週間ほど前に開通したばかりだったが、この道を維持管理してくださる皆様には本当に感心する。


《水平歩道の大太鼓付近 眼下300mに黒部川が流れる》


100年前初めてここに道を造った人はこんなところに桟道を架けたのだろうか》


水平歩道の終点から最後の長い長い急坂を下り、欅平駅に立ち寄りもせず、猿飛峡温泉に直行した。観光客が来るにはまだ早い時間だったので貸し切り状態だった。

欅平から宇奈月までトロッコ電車で、宇奈月からは富山地鉄で黒部まで戻り車を回収して帰宅した。